要介護認定の結果は大きく「要支援」と「要介護」の2つに分かれます。
しかし、「要支援と要介護では、身体の状態以外に何が違うの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか?
そこで、本記事では要支援と要介護の身体の状態だけでなく、介護保険で受けられるサービスの種類やその頻度、支給限度基準額の違いについて紹介します。
要支援・要介護とは?
要支援・要介護度とは、日常生活の中でどの程度の介護を必要とするのか「介護の度合い」を表す指標です。
要介護認定では、日常生活の動作や認知機能の状態を評価して、要支援1・2、要介護1〜5の7段階で判定します。
要支援の状態とは?
要支援とは「今のところ介護の必要性は低いが、部分的な支援が必要」な状態です。
要支援1
要支援1の方は、日常生活上の動作をほぼ自立してできます。
食事や排泄、入浴に介助は必要ありませんが、見守りや一部介助が必要です。
要支援2
要支援2の方は、要支援1の状態に加えて、立ち上がりや歩行に支えを必要とします。支援によっては、要介護状態にならず、改善する可能性が高い状態です。
要介護とはどのような状態?
要介護状態とは「日常生活上の基本動作を自分で行うことは困難で、何らかの介護が必要な状態」です。
要介護1
要介護1は、立ち上がりや歩行に支えが必要な状態で、要支援2と共通しています。
要支援2の方との違いは、状態の安定性や認知症の症状の度合いです。
6か月程度で介護量が増加する可能性が高い場合や、認知症の可能性があると診断されている方は、要介護1と判定されます。
要介護2
要介護2は、要介護1の状態に加えて、入浴や排泄などの日常生活動作に一部介助が必要な状態です。
立ち上がりや歩行が不安定になるため、杖や歩行器などの福祉用具を使用する方が多くなります。
認知機能も低下して、これまでできていたことが難しくなることがあります。
要介護3
要介護3は、自力で立ち上がりや歩行が難しく、排泄や入浴などにほぼ全面的な介護を必要とする状態です。
認知機能面も要介護2よりさらに低下し、認知症の方が多くなります。徘徊や暴言、幻覚などの症状が出現し、目が離せなくなることもあります。
要介護4
要介護4の方は、日常生活全般にわたり、動作が大きく低下します。介護なしでは日常生活を営むことが難しい状態です。
認知機能は、要介護3の状態よりもさらに低下し、意思疎通が難しくなることもあります。
要介護5
要介護5の方は、日常生活の大部分で介助を必要とし、介護なしでは日常生活を営むことが不可能な状態です。寝たきりの状態になることもあります。
要支援・要介護の支給限度基準額の違い
介護保険では、要介護度によってひと月に利用できるサービスの上限額(支給限度基準額)が異なります。
支給限度基準額は、介護度が重くなるほど高く設定されています。
以下の表は、介護度別の支給限度基準額と自己負担額です。
区分 | 支給限度基準額 | 限度額を全て使った場合の自己負担額※ |
要支援1 | 5,032単位 | 5,032円 |
要支援2 | 10,531単位 | 10,531円 |
要介護1 | 16,765単位 | 16,765円 |
要介護2 | 19,705単位 | 19,705円 |
要介護3 | 27,048単位 | 27,048円 |
要介護4 | 30,938単位 | 30,938円 |
要介護5 | 36,217単位 | 36,217円 |
※1単位=10円、自己負担1割、標準値の場合。
要支援・要介護で利用できるサービスの違い
要支援と要介護では、受けられるサービスにも違いがあります。
以下で詳しく見ていきましょう。
要支援で利用できるサービス
要支援の方は「介護予防サービス」が利用できます。
要介護状態になるのをできるだけ遅らせること、なるべく自立できる方向へ支援することがサービスの目的となります。介護予防サービスの名称には基本的に「介護予防」がついています。
介護予防サービスには以下のようなものがあります。
- 介護予防支援(ケアプラン)
- 介護予防訪問入浴介護
- 介護予防訪問看護
- 介護予防居宅療養管理指導
- 介護予防訪問介護リハビリテーション
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防認知症対応型通所介護
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 介護予防短期入所生活介護
- 介護予防短期入所療養介護
- 介護予防特定施設入居者生活介護
- 介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)※要支援2のみ
- 介護予防福祉用具貸与
- 特定介護予防福祉用具販売
介護予防サービスを受けるには、地域包括支援センターに相談してケアプラン(介護予防サービス計画書)の作成を依頼します。
要介護で利用できるサービス
要介護の方が利用できるサービスを「介護サービス」といいます。
介護を受けながら自立した日常生活を維持していくことを目的としたサービスです。
ケアプランは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに作成してもらいます。
介護サービスの種類は以下の通りです。
1.自宅で受けられるサービス
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
2.施設に通うサービス
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 地域密着型デイサービス
- 認知症対応型デイサービス
3.施設に宿泊するサービス
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
4.訪問・通い・宿泊を組み合わせたサービス
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
5.その他サービス
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 住宅改修
6.施設に入所して受けるサービス
◾️公的施設
- 特別養護老人ホーム(原則、要介護3以上)
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- ケアハウス
- 介護療養型医療施設(2024年3月末に廃止決定)
◾️民間施設
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- グループホーム(認知症対応型入居者生活介護)
まとめ
今回は、要介護と要支援の違いをご紹介しました。
介護職として働くうえで、介護度別の状態の特徴や違い、利用できるサービスの種類を理解しておくことはとても重要です。
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