
これから介護職を目指す方の中には、「特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)の違いがよくわからない」という人もいるのではないでしょうか。
どちらも高齢者が入所する施設ですが、実は施設の目的や仕事内容、勤務体制などに大きな違いがあります。
この記事では、両施設の働き方の具体的な違いから、それぞれで習得できる専門スキル、さらにそれぞれに向いている人の特徴まで、わかりやすく解説していきます。
職場選びで迷っている方や、自分に合った職場を見つけたい方は、ぜひ最後までお読みください。
特別養護老人ホームと介護老人保健施設の違い
まず、それぞれがどのような施設なのか、基本的な違いを理解しましょう。
特別養護老人ホーム(特養)
特養は、原則として、要介護3以上の高齢者が終身利用を前提に暮らす施設です。「生活の場」としての介護が中心となり、日常生活支援や看取り介護が多いのが特徴です。
入所者にとって「最後の住まい」となることが多く、家庭的な雰囲気を大切にしています。
現在、全国で約27.5万人もの方が特養への入所を希望しており、待機期間の長期化が社会問題となっています。そのため、より緊急性・必要性の高い方が優先的に入所する仕組みになっています。
介護老人保健施設(老健)
一方、老健は病院から在宅復帰を目指すための「中間施設」という位置づけです。リハビリテーションを通じた生活機能回復が主な目的で、入所期間は3〜6か月程度が目安となっています。
「病院と自宅の橋渡し」という役割を担っており、医療的ケアとリハビリテーションに重点を置いた支援を行っています。
つまり、特養は「生活支援」、老健は「在宅復帰支援」という役割の違いがあるのです。
入所者の特徴と介護職の関わり方の違い
入所者の特徴や介護職に求められる関わり方にも大きな違いがあります。
特養入所者の特徴
特養の入所者は要介護度が高く、寝たきりや認知症の方の割合が高い傾向にあります。終身利用を前提としている利用者が多く、ほかの介護施設に比べて平均入所期間が長いのが特徴です。
老健入所者の特徴
老健の入所者は、病院を退院した直後で病状は安定しているものの、体力やADL(日常生活動作)が低下している方が多い傾向にあります。在宅復帰への強い意欲を持っている方が多いのが特徴です。
介護職に求められる関わり方の違い
特養では長期的な信頼関係づくり、認知症ケア、看取りケアが中心となります。同じ入所者と何年もかけて関係を築いていくため、深いつながりを感じることができるでしょう。
一方、老健では、リハビリの補助、在宅復帰支援、多職種連携が重要な業務となります。限られた期間の中で入所者の目標達成を目指すため、効率的で目標志向の働き方が求められます。理学療法士や作業療法士、医師、ケアマネジャーなど多くの専門職と連携しながら、利用者の在宅復帰に向かって支援していきます。
仕事内容の違い
特養の仕事内容
- 食事・入浴・排せつなどの身体介助
- 季節行事やレクリエーションの企画・実施
- 看取りケアや家族支援
特養では、24時間体制で利用者の生活全般を支えます。誕生日会や夏祭り、クリスマス会など季節の行事を通じて、施設での生活に彩りを添えることも重要な業務です。何より、利用者一人ひとりの「その人らしい生活」を実現するための創意工夫が求められます。
老健の仕事内容
- 日常生活の介助に加え、理学療法士・作業療法士などのリハ職と連携
- 歩行訓練や着替えの練習など、生活動作訓練の支援
- 退所に向けた環境調整や家族への説明
老健の介護職は、通常の介護業務に加えて、在宅でのケア方法を家族に指導したり、必要な福祉用具の選定に関わったりするなど、在宅復帰を支援するための幅広い業務を担います。
勤務体制の違い
どちらの施設も24時間体制で運営されており、夜勤があることは共通していますが、勤務体制には違いがあります。
特養の勤務体制
特養では、夜勤は通常2〜4人体制で行われます。夜間の排せつ介助や体位交換が多く、静かな夜間でも定期的な部屋の巡回や介助が必要です。長期入所者が多いため、夜間の行動パターンを把握しやすく、個別のケアを提供しやすいという特徴があります。
老健の勤務体制
老健では、医師や看護師が医療職が常駐しているため、急変時の対応も比較的安心です。ただし、入退所が頻繁にあるため、新しい利用者の状態把握や退所に向けた準備など、変化に対応する業務が多くなります。
職場環境の違い
特養の職場環境
特養は介護職が中心となった職員体制です。長期的に同じ利用者と関わるため、じっくりと向き合うことができ、深い信頼関係を築くことができるでしょう。
老健の職場環境
老健は、医師・看護師・リハビリ専門職・支援相談員など多職種が常に連携する職場です。さまざまな専門職から学ぶ機会が多く、幅広い知識を身につけることができます。
身につくスキルとキャリアの活かし方
それぞれの施設で培われるスキルは、将来のキャリア形成にも大きな影響を与えます。自分がどのような専門性を身につけたいかを考えて選択しましょう。
特養で身につく専門スキル
特養では、認知症ケアの実践力、看取り・終末期ケアの専門性、長期的な生活支援力が身につきます。これらのスキルは高齢化社会でますます価値が高まり、特に認知症ケアや看取り介護の経験は、どの介護現場でも重宝される専門性です。
老健で身につく専門スキル
老健では、リハビリテーション支援の知識、在宅復帰支援の専門性、多職種連携とチームワークを習得できます。
これらは、ケアマネジャーへのキャリアアップや在宅系サービスへの転職時に有利に働き、医療的知識も自然と身につくため対応力が大幅に向上します。
どちらの施設を選ぶ?向いている人の特徴
特養に向いている人
特養には、長期的な信頼関係を築くのが得意な人が向いています。認知症ケアに興味があり、利用者の「暮らし」を支える仕事にやりがいを感じる方には最適な職場です。
また、人生の最期に寄り添うことに意義を見出せる方、じっくりと一人ひとりと向き合いたい方にもおすすめです。家族的な雰囲気の中で働きたい方にも適しています。
老健に向いている人
老健には、変化のある業務や短期目標設定を好む人が向いています。リハビリや在宅復帰支援に関心があり、利用者が回復する様子を実感したい方には理想的な職場です。
また、医療職と連携して働くことに興味がある方、多職種チームでの仕事をしてみたい方にも適しています。
まとめ

特養は利用者にとっての「生活の場」として、長期的なケアと認知症・看取りケアに重点を置く施設です。
一方、老健は在宅復帰を目指す「中間施設」として、短期間でのリハビリを中心とした機能回復支援を行う施設です。
どちらも介護職として貴重な経験を積める職場ですが、施設の役割が違うため、働き方や求められるスキルも大きく異なります。
就職先を選ぶ際は、自分の性格や興味、将来のキャリアビジョンを明確にすることが重要です。まずは、施設見学や職場体験を通じて、実際の雰囲気を自分の目で確認してみることをおすすめします。
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