
「国家試験の合格率は高いと聞くけれど、本当に自分も受かるのだろうか」 「何から勉強を始めればいいかわからない」
理学療法士を目指すと決めたものの、このような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。たしかに理学療法士国家試験の合格率は高い水準で推移していますが、それは「簡単な試験」という意味ではありません。
本記事では、最新の合格率や難易度の正しい捉え方、そして効率的な勉強法までをくわしく解説します。これから受験を控えている方は、ぜひ参考にしてください。
理学療法士国家試験の基本をおさえよう
まずは、試験そのものの全体像を確認しておきましょう。
理学療法士国家試験は、理学療法士の資格を取得するために必要な国家試験で、年1回、例年2月下旬に実施されます。
受験するには受験資格が必要で、大学や専門学校などの理学療法士養成校で3年以上のカリキュラムを修了(見込みを含む)することで得られます。つまり、誰でもすぐに受験できる試験ではなく、養成校で専門的な教育を受けた人だけが挑戦できる試験だといえるでしょう。
出題数は午前100問・午後100問の計200問で、マークシートによる選択式です。内訳は、1問1点の「一般問題」が160問、1問3点の「実地問題」が40問となっています。実地問題とは、症例や画像などの具体的な臨床場面を提示し、評価や治療方針の判断を問う問題のこと。配点が1問3点と大きいため、試験対策のうえで重要なポイントになります。
合格率の推移と難易度
受験を考えるうえで、いちばん気になるのが合格率ではないでしょうか。
最新(第61回)の合格率
2026年3月23日に発表された第61回理学療法士国家試験は、受験者数1万2,436人、合格者数1万1,156人、合格率89.7%でした。新卒者に限ると、受験者1万1,366人に対し合格者1万782人、合格率は94.9%にのぼります。
近年は80%台後半で安定している
直近5年の合格率の推移を見てみましょう。
| 回(実施年) | 合格率 |
| 第57回(2022年) | 79.6% |
| 第58回(2023年) | 87.4% |
| 第59回(2024年) | 89.2% |
| 第60回(2025年) | 89.6% |
| 第61回(2026年) | 89.7% |
出典:厚生労働省「理学療法士国家試験及び作業療法士国家試験の合格発表について」(第57回〜第61回・各年)をもとに作成
このように、直近4年は80%台後半で安定して推移しており、しっかり準備をすれば十分に合格を狙える試験といえます。
新卒と既卒では合格率に差がある
一方で、注意しておきたいのが新卒者と既卒者の差です。厚生労働省が公表しているのは全体と新卒者の合格率で、新卒者は直近4年間(第58〜61回)いずれも94〜95%台で推移しています。
全体の受験者数・合格者数から新卒者分を差し引いて既卒者の合格率を算出すると、第59回(2024年)が約33%、第60回(2025年)が約31%、第61回(2026年)が約35%と、いずれも30%台にとどまります。(※)
この差の背景には、卒業後は養成校の国家試験対策サポートを受けにくくなること、働きながらの受験では勉強時間の確保が難しいことなどがあると考えられます。既卒での挑戦が不利に働きやすいのは事実ですが、裏を返せば、在学中にいかに計画的に学習を積み重ねて一度で合格するかが大切だということです。既卒で再挑戦する方も、学習環境とスケジュールを意識的に整えることで、合格の可能性は十分に高められるでしょう。
※ 既卒者の数値は、厚生労働省「理学療法士国家試験及び作業療法士国家試験の合格発表について」(第59〜61回)の公表値をもとに算出。
「合格率が高い=簡単」ではない理由
合格率の数字だけを見ると、やさしい試験のように感じるかもしれません。しかし、そう単純ではない理由があります。
1.受験者がすでに選抜されている
受験できるのは養成校で3年以上学んだ人だけです。解剖学・生理学・運動学といった専門科目を修め、臨床実習を乗り越えた人たちが受験して、なお1割前後は不合格になっている、というのが実際の姿です。
2.合格基準が2つある
第61回試験では、総得点167点以上(277点満点、採点除外の取扱いにより満点が変動)に加えて、実地問題で41点以上(117点満点)を得点することが求められました。総得点の目安はおおむね60%で、実地問題にも基準点が設けられているため、実地問題を苦手なままにしておくと、総得点が足りていても不合格になる可能性があります。
3.出題傾向の変化
近年は知識の暗記だけでは対応しにくい、症例や画像から評価・治療方針を考えさせる臨床推論型の問題が増える傾向にあります。「覚える」だけでなく「考えて使う」力が求められるようになっているのです。
こうした特徴を踏まえると、やみくもに勉強するのではなく、試験の性質に合った対策を立てることが合格への近道になります。
効率的な勉強法
ここからは、限られた時間で合格に近づくための勉強法を紹介します。
早い時期に基礎科目を固める
解剖学・生理学・運動学は、理学療法のすべての土台となる科目です。専門科目や実地問題も、突き詰めれば基礎科目の理解の上に成り立っています。低学年のうちから基礎を固めておくと、学年が上がってからの学習効率が大きく変わってくるでしょう。
過去問は「説明できるレベル」まで繰り返す
国家試験対策の軸になるのが過去問演習です。過去問と同様・類似の問題が多く出題される傾向があるため、まずは過去問を繰り返し解いて出題傾向をつかみましょう。その際、正解できたかどうかだけでなく、「なぜその選択肢が正解で、ほかは不正解なのか」を自分の言葉で説明できるレベルを目指すことが大切です。ここまで仕上げると、言い回しを変えた応用問題にも対応しやすくなるはずです。
配点の大きい実地問題を優先的に対策する
実地問題は1問3点と配点が大きく、合否を左右します。仮に実地問題40問で高得点を確保できれば、総得点の面でかなり有利になるでしょう。症例文や画像から情報を読み取る練習を意識的に取り入れ、疾患ごとに「評価→目標設定→治療プログラム」の流れを整理しておくのがおすすめです。
模試で弱点を可視化し、逆算して計画を立てる
模擬試験は、現時点の実力と苦手分野を客観的に知るための貴重な機会です。結果に一喜一憂するのではなく、「どこを補強すべきか」を知る材料として活用しましょう。そのうえで、試験日から逆算して「いつまでに何を終えるか」を決め、自分の生活に無理なく組み込める計画を立てることが、継続のコツといえます。
まとめ

理学療法士国家試験の合格率は、直近では80%台後半で安定しており、第61回(2026年)は89.7%でした。数字のうえでは高い合格率ですが、養成校で学んだ人たちが挑戦した結果であり、決して油断できる試験ではありません。
大切なのは、基礎科目を早めに固め、過去問と実地問題を軸に、試験日から逆算して計画的に学ぶことです。日々の学習を着実に積み重ねることが、合格につながります。まずは今日できる学習から取り組んでいきましょう。
出典
厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」(2026年)
厚生労働省「第60回理学療法士国家試験及び第60回作業療法士国家試験の合格発表について」(2025年)
厚生労働省「第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について」(2024年)
厚生労働省「第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について」(2023年)
厚生労働省「第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について」(2022年)
監修:中谷ミホ(社会福祉士、介護福祉士、保育士)


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