
2025年度(2026年1月実施)の第38回介護福祉士国家試験から、新たに「パート合格制度」がスタートしました。
「名前は聞いたことがあるけれど、仕組みがよくわからない」「これから受験する自分に、どんな影響があるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、パート合格制度の仕組みをわかりやすくおさらいしたうえで、初めて実施された第38回試験の結果をもとに「実際に何が変わったのか」を紐解いていきます。
パート合格制度とは?仕組みをおさらい
パート合格制度とは、介護福祉士国家試験の13科目を「3つのパート」に分けて、パートごとにも合否を判定する仕組みです。合格したパートは、翌年・翌々年までの2年間、受験が免除されます。
3つのパートの科目構成は次のようになっています。
| パート | 科目 |
| パートA | 人間の尊厳と自立、人間関係とコミュニケーション、社会の理解、介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術 |
| パートB | こころとからだのしくみ、発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、医療的ケア |
| パートC | 介護過程、総合問題 |
ここで大切なのは、合否判定が「2段階」になっているという点です。
- まずは全体で判定(本線)
従来どおり、試験全体で判定が行われます。総得点125点の60%程度(難易度による補正あり)を得点し、かつ11の科目群すべてで得点があれば「合格(=介護福祉士国家試験合格)」です。
- 届かなかった場合にパートごとで判定(セーフティネット)
全体で合格に届かなかった場合に、パートごとの判定が行われます。各パートの基準点以上を得点し、そのパート内のすべての科目群で得点があれば「パート合格」となります。
つまり、最初から「試験を3回に分けて受ける制度」ではありません。あくまで一度での全体合格を目指しつつ、もし届かなかった場合でも、学習の積み上げを次につなげられるセーフティネットと考えるとわかりやすいでしょう。
どの受験ルートの人が対象になる?
介護福祉士国家試験には以下の4つの受験ルートがありますが、パート合格制度は科目区分に基づく判定のため、受験ルートによる適用除外はありません。すべての受験者が対象になります。
- 実務経験ルート
- 養成施設ルート
- 福祉系高校ルート
- 経済連携協定(EPA)ルート
なお、第37回試験から実技試験は廃止され、現在はどのルートでも筆記試験のみで合否が判定されます。
※平成20年度以前入学の福祉系高校卒業者、特例高校卒業者、EPA候補者で令和6年5月以前入国の方は、資格登録の申請までに「介護過程Ⅲ」の受講が必要です。
第38回で実際どうだった?1万人以上が「パート合格」を実感
2026年3月に発表された第38回試験の結果を見てみましょう。
第38回の全体の合格率は70.1%、合格基準は総得点125点中64点以上でした。前回の第37回(78.3%)と比べると、例年70〜80%台で推移してきた中ではやや低めの結果です。出題の言い回しの変化など、読解力が求められる傾向が背景として指摘されていますが、制度導入との直接的な因果関係がはっきりしているわけではありません。「合格率は毎年変動するもの」として、冷静に受け止めるのがよいでしょう。
そして注目したいのが、初めて判定されたパート合格の実数です。全体では合格に届かなかった方のうち、各パートの合格者は以下のとおりでした。
- パートA合格者: 3,935人
- パートB合格者: 1,509人
- パートC合格者: 6,181人
あわせて1万人を超える方が、いずれかのパートの「合格」を手にしました。従来であれば「不合格」という結果だけが残っていたところ、これらの方々は次回の第39回試験から、合格済みパートの免除を受けて、残りのパートに集中して再挑戦できる立場になったのです。ここが、制度導入によって実際に変わった最大のポイントです。
受験者への影響|変わったこと・変わらないこと
これから受験する方への影響を整理してみましょう。
変わったこと
- 学習の積み上げが無駄になりにくくなった
不合格でも、得点できたパートは「合格」として残るため、再挑戦の際は苦手なパートの学習に集中できます。
- 再受験時の選択肢が増えた
免除を使って不合格パートのみを受験するか、あえて全パートを受験し直すか(全パートを受験すれば、総得点での合格判定も受けられます)を自分で選べます。
変わらないこと
- 試験の実施スケジュール
従来どおり年1回・1日で実施されます(午前にパートA、午後にパートB・C)。
- 初回受験の条件
初めて受験する場合は全パートの受験が必要です。
- 合格基準の水準
試験そのものが簡単になったわけではありません。
- 受験手数料
不合格パートのみの受験でも、一律18,380円がかかります。
2つの注意点
- 有効期限がある
パート合格の効力は「受験した年の翌々年まで」です。期限内に残りのパートに合格できなければ、また全パートからの受験に戻ります。
- パート合格=資格取得ではない
すべてのパートに合格して初めて国家試験合格となります。パート合格の段階では介護福祉士を名乗ることはできず、資格手当などの対象にもなりません。
これから受験する人が意識しておきたいこと
パート合格制度ができても、目指すゴールは変わりません。まずは従来どおり、「一度での全体合格」を目標に全科目をバランスよく学習しましょう。最初からパート合格をあてにして学習範囲を絞ると、総得点での合格が遠のくうえ、結果的に受験の年数や費用がかさんでしまいます。
そのうえで、もし不合格だった場合は、結果通知でパートごとの合格状況を確認できます。合格できたパートがあれば、次回はそのぶんの学習時間を不合格パートに振り向けられます。「どの科目でつまずいたのか」を過去問でしっかり振り返りながら、重点的に対策を立て直しましょう。有効期限は翌々年までですから、「いつまでに残りのパートに合格するか」を決めて、逆算して学習計画を立てることが大切です。
働きながら、あるいは子育てや介護をしながら受験する方にとって、「一度の不合格で努力が振り出しに戻らなくなったこと」は、心理的にも大きな支えになるはずです。
まとめ

パート合格制度は、全体で合格に届かなくても、基準を満たしたパートを2年間有効な「合格」として残せるセーフティネットです。
初回実施となった第38回試験では、実際に1万人を超える方がパート合格を得て、次回に向けた足がかりをつかみました。試験そのものが易しくなったわけではありませんが、「一度でだめでも、積み上げた力を次につなげられる」試験に変わったことはたしかです。
挑戦し直しやすくなった今の仕組みを味方につけて、着実に介護福祉士国家試験の合格を目指していきましょう。
出典
- 厚生労働省「第38回介護福祉士国家試験合格発表について」
- 公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 合格基準」
監修:中谷ミホ(社会福祉士、介護福祉士、保育士)


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