管理栄養士は福祉業界にも数多くの就職先がある一方で「管理栄養士の年収は低い」という話を耳にして、不安を感じている人もいるかもしれません。
しかし、管理栄養士の年収は職場によって違いがあり、工夫次第で現在の年収をさらに上げることも可能です。
今回は、管理栄養士の平均給与や給料の高い職場などをくわしく解説します。
管理栄養士の平均年収
日本労働組合総連合会(連合)のデータによると、2022年の栄養士の平均年収は383万円、平均月収は26万4千円でした。
上記は栄養士も含めた金額となるため、管理栄養士に限定した場合は若干水準があがると推測されています。
ここから、さらに詳細な平均給与を見ていきましょう。
男女の雇用形態別の平均年収と月収
栄養士の男女の雇用形態別平均年収を表にまとめました。
雇用形態(いずれも60歳未満) | 男性の年収 | 女性の年収 |
正社員 | 402万円 | 364万円 |
契約社員 | 276万円 | 300万円 |
短時間労働者(パート) | 181万円 | 147万円 |
(出典:日本労働組合総連合会(連合)「2022年賃金構造基本統計調査特別集計にもとづく職種別賃金の研究」)
一方、男女の雇用形態別の月収(時給)の平均は以下のようになります。
雇用形態(いずれも60歳未満) | 男性 | 女性 |
正社員 | 月収27.8万円 | 月収25万円 |
契約社員 | 月収19.7万円 | 月収23.8万円 |
短時間労働者(パート) | 時給912円 | 時給1,384円 |
(出典:日本労働組合総連合会(連合)「2022年賃金構造基本統計調査特別集計にもとづく職種別賃金の研究」)
両者を比較すると、正社員の場合は男性の方が給与が高いのに対し、契約社員の場合は女性の方が給与が高くなっています。
また、パートの場合は女性の方が時給が高く、年収に関しては男性の方が高い数値が出ています。
以上の点から、男性は正社員として勤務することで安定した収入が期待でき、女性はライフステージに応じて多様な働き方ができると考えられるでしょう。
年齢別の平均年収
厚生労働省による、栄養士の年齢別の年収を表にまとめました。
年齢 | 年収 |
25~29歳 | 約343万円 |
30~34歳 | 約376万円 |
35~39歳 | 約400万円 |
40~44歳 | 約404万円 |
45~49歳 | 約439万円 |
50~54歳 | 約459万円 |
55~59歳 | 約547万円 |
60~64歳 | 約391万円 |
(出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」)
年齢別の年収は20代から徐々に上がり続け、50代でピークを迎えることがわかります。
就職直後は給与が低く感じても、コツコツとキャリアを積み重ねていくことで、収入を上げられる可能性が高いです。
なお、栄養士の初任給の平均は月収約20万円、年収に換算すると約250万円となっています。
管理栄養士の年収が低いと言われる理由
日本労働組合総連合会(連合)のデータによると、2022年の正社員(全職種)の平均年収は男性542万、女性410万円です。
上記の金額と比較すると、管理栄養士の年収が低く感じるのは否めません。
管理栄養士の年収が低いと言われる理由は、以下の3つが考えられます。
- 管理栄養士にしかできない業務が少ない
- 求人数に対して管理栄養士の人数が多い
- 利益を生み出しにくい
管理栄養士は、国家資格のうちの「名称独占資格」に該当します。
このため資格のない人でも栄養指導や食事管理を実施できることが、給与を抑えられる一因となっています。
管理栄養士名簿の登録者数は毎年約1万人ずつ増加しているのに対し、施設の求人は配置基準を満たす1名のみ募集しているケースも多いです。
また、管理栄養士は他の職種と比較して国や民間からもらえる報酬額が低く、利益を生み出しにくいのも年収が低い一因と言えるでしょう。
管理栄養士として働きながら効率よく収入を上げていくには、就職先や業務内容を精査することが大切です。
管理栄養士の年収が高い職場3選
管理栄養士の年収は、本人の経験やスキルのほか、働く場所によっても差があります。
ここから、比較的年収が高い傾向にある職場を3つ紹介します。
給食センター
学校や病院などを対象に給食を調理して食事を提供する給食センターは、人手不足もあって、ほかの職場と比較して年収が高いケースが多いです。
一度に大量調理を行う必要があり、それに応じた献立づくりや調理技術が求められます。
職場によっては休日出勤や交代制勤務を採用しているところもあるため、就活の際は事前に勤務形態を確認しておくと安心です。
食品関連の企業
大手企業をはじめとした食品関連の会社は、管理栄養士が働ける場所のなかでも特に年収が高い傾向にあります。
商品の企画や衛生管理、商品パッケージに記載する栄養成分表示の作成などが主な業務内容です。
自身が開発した商品が大ヒットすれば賞与に反映される場合もあり、頑張り次第で高収入が期待できるでしょう。
病院や介護施設
病院や介護施設では、管理栄養士の配置が義務づけられています。
利用者の栄養管理や栄養指導も業務に含まれており、専門的な知識が必要になりますが、その分年収も高い場合が多いです。
募集人数が限られているため競争率が高い一方で、高齢化の進む日本では今後さらなる需要が見込まれる職場でもあります。
なお、高齢者施設における管理栄養士のくわしい仕事内容は、こちらの記事でもくわしく解説しています。
管理栄養士の年収を上げるのに役立つ資格2選
管理栄養士として働きながら年収を上げていくには、自身のスキルアップが必要不可欠です。
ここでは、管理栄養士と相性のいい資格を2つ紹介します。
公認スポーツ栄養士
公認スポーツ栄養士は「公益社団法人 日本栄養士会」が認定する民間資格で、アスリートを食の面から支えるスポーツ栄養のスペシャリストです。
2008年に創設された資格で、2021年10月時点の認定者数は436人となっています。
合格率が2割以下という難易度の高い資格ですが、取得すればスポーツ選手の身体づくりの知識も持つ管理栄養士として活動できるのがメリットです。
主な就職先としてプロスポーツチームのほか学生の部活動やジュニアアスリートの支援事業、フィットネスジムなどがあげられます。
また、自らのスキルと経験を活かして、フリーランスで活動する有資格者が多いのも特徴です。
NR・サプリメントアドバイザー
NR・サプリメントアドバイザーは「一般社団法人 日本臨床栄養協会」が認定する民間資格です。
健康で長生きするための栄養学の知識に加えて、健康食品や保健機能食品、サプリメントについての知識と情報も習得できます。
通信教育の内容は厚生労働省のガイドラインに100%対応しており、5年に一度の更新制度も設けられているため、常に最新の情報を取得できる点も魅力です。
主な就職先に、保健機能食品などが販売されているドラッグストアや薬局、消費者センターなどの消費者相談機関、エステサロンなどがあげられます。
また、副業やフリーランスとして地域で料理教室や健康教室を開催し、仕事の幅を広げている事例もあります。
まとめ
栄養士の平均年収は383万円、平均月収は26万4千円と、他職種と比較すると決して高い金額ではないのは事実です。
しかし、食は人が生きる上で欠かせないものであり、楽しみのひとつでもあります。
同じ職場でキャリアを積み重ねたり、ほかの資格と組み合わせて活動することで仕事の幅を広げたりしながら年収を上げられるのも管理栄養士の魅力です。
自身に合った働き方で、楽しみながらキャリアアップしていきましょう。
監修者:中谷ミホ
社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、保育士
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