重度訪問介護とは?他サービスとの違いや仕事内容・必要な資格を解説!

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重度訪問介護は、重度の障害をもつ方に長時間のケアを提供するサービスです。

今回は、重度訪問介護と他のサービスとの違いを解説したうえで、仕事内容や必要な資格、従事するためにおすすめの研修などを詳しく解説します。

「利用者に長時間、手厚く関わりたい」「より専門的なケアが必要な方も支援したい」と思っている方は、ぜひ参考にしてください。

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重度訪問介護とは?

重度訪問介護は、障害者総合支援法に基づいて提供される障害福祉サービスのひとつです。

重度の肢体不自由や知的障害、精神障害があり、常に介護を必要とする方のためのサービスとして位置づけられています。

重度の障害があっても、手厚い介護を通じて在宅での生活を継続できることを目的としています。

従来の訪問介護では対応が困難な専門的ケアや、24時間体制での支援も可能です。

対象者

重度訪問介護の対象者は、必要な支援の度合いを示す「障害支援区分」が4以上で、次の条件の1か2に該当する方です。

1.以下の条件の両方を満たす

  • 二肢以上に麻痺等がある
  • 歩行・移乗・排尿・排便のいずれも「支援が不要」以外と認定されている

2.障害支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上

対象者の代表的な疾患としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの難病、脊髄損傷、脳性麻痺、重度心身障害、強度行動障害など多岐にわたります。

原則として18歳以上の方が利用できるサービスですが、児童相談所長が必要性を認めた場合に限り、15歳以上の障害児も対象になることがあります。

重度訪問介護・居宅介護・訪問介護の違い

重度訪問介護と混同されやすいサービスに、居宅介護や訪問介護があります。

それぞれの違いは以下の表のとおりです。

【重度訪問介護・居宅介護・訪問介護の違い】

重度訪問介護居宅介護訪問介護
制度障害福祉サービス介護保険サービス
利用条件障害支援区分4以上障害支援区分1以上要介護認定を受けている
年齢原則18歳以上例外的に15歳以上65歳以上40~64歳(16の特定疾病により要介護状態となった場合に限る)
サービス内容身体介護家事援助移動介護その他(相談や助言、見守りなど)身体介護家事援助その他(相談や助言、生活全般にわたる援助)身体介護生活援助通院時の乗降車介助
サービス提供時間24時間可能身体介護は1回あたり原則3時間以内家事援助は1回あたり原則1.5時間以内身体介護は1回あたり原則1時間以内生活援助は1回あたり原則45分以内
サービス提供間隔特に定めはなし一日に2回以上の訪問・サービスを提供する場合、2時間以上の間隔を空ける

重度訪問介護と他の訪問系サービスとの最も大きな違いは、長時間かつ連続した支援ができる点です。

居宅介護や訪問介護では1回ごとの支援時間や、次のサービスまでの間隔にルールが設けられています。

一方、重度訪問介護では、サービス提供間隔にとらわれず24時間体制での支援が可能です。

このような切れ目のない支援は、痰の吸引や経管栄養の管理などの医療的ケアや、常時の見守りが必要な方にとって特に重要であり、生活を支えるうえで欠かせないサービスといえるでしょう。

重度訪問介護の仕事内容

重度訪問介護の仕事内容は、訪問介護で行われる身体介護や生活援助と共通点が多いように

みえます。

しかし、実際には重度の障害をもつ方への包括的な支援が求められるため、内容はより専門的で対応の幅も広くなります。

痰の吸引や見守り対応などを通じ、医療的な知識や危機対応力が必要となる場面も少なくありません。

ここからは、重度訪問介護の仕事内容と必要な知識・スキルについて解説します。

身体介護

入浴、排泄、食事、更衣などの介助に加え、痰の吸引や経管栄養の処置が必要となることもあります。

人工呼吸器や経管栄養のチューブなどを装着している方もいるため、体位交換や入浴介助の際には以下のような点に特に注意が必要です。

  • 配線やチューブが抜けたりねじれたりしないように、介助の前後で位置を確認する
  • 呼吸状態や表情、皮膚の色などを観察しながら、無理のない姿勢を保つ
  • 機器への水濡れや衝撃がないように、介助の動線や手順をあらかじめ確認しておく

このように、利用者の状態や使用する機器に合わせて、細心の注意を払います。

家事援助

調理、洗濯、掃除、生活必需品の買い物など、日常生活に関わる支援が家事援助です。

視覚障害や上肢の麻痺といった障害特性に応じて、請求書や回覧板、チラシなどの読み上げや、手紙・アンケートの代筆をすることもあります。

また、育児支援として利用者の子どもの通院に付き添ったり、保育所への送迎を行ったりする業務も含まれます。

移動介護

移動介護では、外出時の移動支援や移動中の介護を行います。

たとえば車椅子の操作に加え、移動中に必要な体位交換や痰の吸引といったケアが含まれます。

利用者が医療機器を装着しているケースもあるため、その取り扱いに関する知識や操作技術の習得が不可欠です。

また、移動中に体調が急変する可能性もあるため、状況を見極めて臨機応変に対応できる能力も求められます。

その他(相談・助言・見守りなど)

生活全般に関する相談対応や助言、見守りも重度訪問介護の大切な役割のひとつです。

利用者の悩みに耳を傾け、必要に応じてアドバイスするほか、コミュニケーション支援ツールを使って意思疎通をサポートする場面もあります。

また見守りでは、重度行動障害にともなう暴言・暴力・自傷・多動・パニックなどの危険行動を事前に察知し、未然に防ぐ対応も求められます。

利用者が安心して暮らせるように、一人ひとりの障害特性を理解し、人格と意思を尊重した対応が欠かせません。

重度訪問介護で働くために必要な資格

重度訪問介護の業務に従事するには、以下のいずれかの資格または研修を修了している必要があります。

  • 介護福祉士
  • 介護福祉士実務者研修
  • 介護職員初任者研修
  • 看護師・准看護師
  • 重度訪問介護従業者養成研修
  • 居宅介護職員初任者研修
  • 障害者居宅介護従業者基礎研修

すでに訪問介護事業所で勤務している方であれば、介護系の資格を取得しているため、重度訪問介護に従事する条件を満たしていることがほとんどです。

ただし、「生活援助従事者研修」のみを修了している場合は対象外となります。

これは、訪問介護において生活援助しか行えない資格であり、身体介護を含む重度訪問介護には対応していないからです。

そのため、重度訪問介護に従事したい場合は、前述のいずれかの資格を取得しておきましょう。

さらに、重度の障害を持つ方へ専門的なケアを提供したい場合は、次に紹介する研修の受講をおすすめします。

専門的な知識・スキルを習得したい場合は重度訪問介護従業者養成研修がおすすめ

重度の障害をもつ方に特化したケアの知識・技術を体系的に学びたい方は、「重度訪問介護従業者養成研修」の受講がおすすめです。

この研修は看護師や介護福祉士などの有資格者はもちろん、介護の従事経験がない方でも受講でき、年齢や学歴も問われません。

都道府県知事が指定する事業所が実施しており、以下の4つの課程に分かれています。

1.基礎課程

  • 重度の肢体不自由者への生活支援や移動介助に必要な基礎知識と技術を学ぶ研修
  • 障害支援区分4・5の利用者のみに対応
  • 研修時間:約10時間(2日程度)

2.追加課程

  • 基礎課程の学びを深め、重度障害者への緊急時対応に必要な知識と技術を学ぶ研修
  • 基礎課程修了後に受講可能
  • 障害支援区分4~6のすべてに対応可能
  • 研修時間:約10時間(2日程度)

3.統合課程

  • 基礎課程と追加課程の内容を統合したカリキュラム
  • 障害支援区分4~6のすべての利用者に対応可能
  • 研修時間:約20時間(3~4日程度)

4.行動障害支援課程

  • 知的障害・精神障害者の特性理解や、危険行動への対応に必要な知識と技術を学ぶ研修
  • 研修時間:約12時間(2日程度)

最も効率的に学べるのは統合課程です。

基礎課程と追加課程を別々に受講する必要がなく、1回の受講で完結し、すべての障害支援区分に対応できるからです。

医療的ケアの基礎知識も含まれており、多くのスクールで開講されているため、統合課程を選択するとスムーズに学べます。

ただし、行動障害支援課程は開講しているスクールが限られているため、受講する機関で受けられるかどうかを事前に確認しておきましょう。

まとめ

重度訪問介護は、重度の障害をもつ方に長時間の専門的なケアを提供できるサービスです。

すでに訪問介護で働いている方であれば従事する要件は満たしており、重度訪問介護の分野を経験することで、さらにキャリアアップを目指せるでしょう。

より専門性の高い知識やスキルを習得したい方は、ぜひ重度訪問介護にチャレンジしてみてください。

鈴木 康峻

2008年に理学療法士免許取得。介護老人保健施設で入所・通所・訪問リハビリに携わりながら、介護認定調査や審査会、地域ケア会議などに関わっています。
現役の理学療法士だからこそ得られる一次情報を活かし、ライターとしても活動。医療・介護に関する記事を執筆しています。
保有資格:理学療法士、ケアマネジャー、福祉住環境コーディネーター2級など

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