福祉美容師は、高齢者や身体の不自由な人の洗髪やヘアカットなどを通じて、生活の質を向上させる重要な役割を担っています。
高齢化が進む日本でさらなる需要が見込まれる職種であると同時に、通常の美容院で長時間働くのが難しい人でも従事しやすいのがメリットです。
今回は、福祉美容師の仕事内容やおすすめの講習、年収などをくわしく解説します。
福祉美容師とは
福祉美容師とは、以下の理由で外出が困難な人を対象に、自宅または施設へ訪問して美容サービスを提供する職種です。
- 高齢者や障がい者
- 妊婦または乳幼児を育児中の主婦
- 在宅介護をする家族
主な仕事内容は、ヘアカットやヘアカラー、パーマなど通常の美容院で行う施術と同じです。
しかし、通常のヘアサロンのように施術者のイスの高さを調整したり、シャンプー台で洗髪したりすることはできません。
訪問先の環境と利用者の心身の安全を考慮しながら施術する必要があり、時には寝たきりの人に対してシャンプーやカットをすることもあります。
このような背景から、美容の知識と技術に加えて、介護や介助の基本や利用者やそのご家族とのコミュニケーションスキルも求められる仕事です。
福祉美容師になるには
福祉美容師になるには、美容師免許か理容師免許の国家資格が必要です。
美容師、理容師ともに都道府県知事指定の養成施設で2年以上学び、国家試験に合格することで取得できます。
まつ毛エクステの施術ができるのは美容師のみ、顔そりができるのは理容師のみなど、両者の業務範囲が異なる部分もあるので注意しましょう。
その後、厚生労働省やNPO団体などが認定する福祉美容関係の資格を取得すると、福祉美容師として働けます。
なお、福祉美容師と似ている名称の職種に「介護美容師」があります。
介護美容師は、美容師または理容師の国家資格のみで働ける点が福祉美容師との違いです。
両者の仕事内容に大きな違いはありませんが、認定資格を取得すると、より質の高いサービスを提供できるでしょう。
福祉美容師になるための講習はどこがいい?
福祉美容師になるための認定資格は複数あり「どれを受講したらいいのか悩む」というお悩みも伺います。
今回はおすすめの認定資格3つと、受講内容や費用などの概要を紹介するのでぜひ参考にしてください。
訪問福祉理美容師
訪問福祉理美容師とは、一般社団法人日本訪問福祉理美容協会が主催する認定資格です。概要を以下にまとめました。
受講資格 | 美容師または理容師の国家資格所持者(厚生労働省指定の美容師・理容師養成施設を卒業、または美容師・理容師試験の受験履修単位取得見込み証明が可能な者も可) |
講習内容 | ・訪問美容の概要・福祉や介護、医療などの基礎知識・高齢者とのコミュニケーションや衛生管理 他 |
会場 | 全国各地 |
受講形式 | 対面での講義(1日) |
受講料 | 25,000円 |
認定証交付日 | 講座終了後、即日 |
(出典:一般社団法人日本訪問福祉理美容協会)
研修の最後には質疑応答の時間が設けられており、不安や疑問に感じていることを講師に直接相談できます。
1日で介護の基礎知識やベッドサイドでのカットや洗髪の方法など、福祉美容に役立つスキルを学べるため、忙しい人にもおすすめです。
福祉理美容師
福祉理美容師とは、認証NPO法人日本理美容福祉協会が主催する認定資格です。概要を以下にまとめました。
受講資格 | 美容師または理容師の国家資格を持つ人 |
講習内容 | ・介護の基礎知識と介助方法・寝たきりの利用者へのカットやシャンプー技法・福祉美容師としての営業のノウハウ 他 |
会場 | 全国各地 |
受講形式 | 自宅学習+2日間のスクーリング |
受講料 | 27,000円 |
認定証交付日 | 2日目の実技スクーリング修了後 |
(出典:認証NPO法人日本理美容福祉協会)
テキストを使った自宅学習と2日間のスクーリングで、介護の基礎知識や訪問美容に必要なスキルを深く学べます。
実技スクーリングでは訪問美容の準備〜仕上げまでの流れを行える講義もあり、豊富な実戦経験を積みたい人におすすめです。
ヘアメイク・セラピスト
ヘアメイク・セラピストは、一般社団法人日本訪問理美容推進協会が主催する認定資格です。概要を以下にまとめました。
受講資格 | 美容師または理容師の国家資格を持つ人 |
講習内容 | ・医療・介護の基礎知識と介助の基本・寝たきりの利用者への安全な理美容技術・バリカンの応用技術 他 |
会場 | 全国各地またはオンライン |
受講形式 | 自宅学習+対面でのスクーリングまたはZoom講義(1日) |
受講料 | 27,500円(再受講6,600円) |
認定証交付日 | 対面:講座修了後オンライン:レポート提出・審査後に郵送 |
(出典:一般社団法人日本訪問理美容推進協会)
対面での受講だけでなく、Zoomを利用したオンライン受講もできるのが大きな特徴です。
講師の実技を間近で見て、自分も実践したい人は対面のスクーリングを選ぶと良いでしょう。
オンライン受講は「朝・昼・夜・深夜」と開催時間が豊富に用意されており、本業や子育てなどの合間に受講したい人におすすめです。
福祉美容師に関するよくある質問
福祉美容師として働くメリットや年収など、よくある質問をまとめました。
福祉美容師の年収は?
福祉美容師の給与額は、一般的な美容師や理容師と同程度だと言われています。
令和5年度の、美容師と理容師の平均年収と求人賃金(月額)を表にまとめました。
美容師 | 平均年収:379.7万円求人賃金(月額):26.4万円 |
理容師 | 平均年収:379.7万円求人賃金(月額):28.6万円 |
(出典:職業情報提供サイト「jobtag」)
福祉美容師は独立してフリーランスで働く人も多く、自分の裁量でさらに収入を伸ばすことも可能です。
福祉美容師になるメリットは?
福祉美容師は、利用者の自宅や施設に訪問してサービスを提供することから、自分の都合に応じて就労時間や休日を設定できます。
一般的な美容院は拘束時間が長い傾向にあり、妊娠出産や家庭の事情により退職を余儀なくされる人も多いのが現状です。
福祉美容師なら、子育てや家族の介護をしながらでも無理なく働ける点がメリットです。
また、一般的な美容院や理容院を経営する傍ら、空いた時間に福祉美容師として施設などを訪問する働き方もできます。
精力的に働いて収入を増やしたい人にとっても、有益な職種だと言えるでしょう。
福祉美容師に役立つ資格はほかにもある?
短期間で取得でき、福祉美容師の業務に役立つ資格のひとつが「認知症介助士」です。
公益社団法人日本ケアフィット共育機構が主催する認定資格で、セミナー会場またはオンラインでの検定試験に合格すれば最短1日で取得できます。
2022年時点で高齢者の5人に1人が認知症患者というデータもあり、認知症患者を接客する機会は今後も増加することが予測されます。
認知症の主な種類と症状や、具体的な関わり方などを習得しておくと、認知症患者に対して円滑なサービスの提供が可能になるでしょう。
まとめ
福祉美容師は、事情により外出が困難な人の自宅や施設へ訪問し、洗髪やヘアカット、パーマなどの美容サービスを提供するのが主な仕事です。
ヘアスタイルを整えることで一気に表情が明るくなり、リハビリや日常生活に前向きになる利用者は少なくありません。
利用者の自宅や施設へ訪問して施術するのは、通常の美容院とは異なる大変さがあるのは事実です。
その一方で、利用者の喜ぶ姿にやりがいを感じる人が多いのも大きな特徴のひとつです。
「子育てや家族の介護をしながら働きたい」「今より収入を伸ばしたい」と考えている理容師・美容師の人は、ぜひ福祉美容師を目指してみてはいかがでしょうか。
コメント