
就労継続支援B型は、障害や難病により一般企業での就労が難しい方が、就労の機会や生産活動の場を得るための福祉サービスです。
本記事では、就労継続支援B型で利用者の支援に当たる職員の仕事内容や必要資格、給料などについてわかりやすく解説します。
さらに、就労継続支援A型や就労移行支援との違いについても紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型(以下、B型事業所)とは、障がいや難病により一般企業での就労が困難な方を支援する、障害者支援法に基づく福祉サービスです。
利用者は事業所と雇用契約を結ばず、就労のための訓練や支援を受けながら働き、労働の対価として「工賃」を受け取ります。
利用者の体調や特性に応じて、労働時間を半日や週1日などと柔軟に調整できる点がメリットです。
利用対象者
B型事業所には、次のような利用者が通所しています。
- 就労移行支援などを利用して一般企業への就職を目指したが、雇用に結びつかなかった方
- 一般企業や就労継続支援A型での就労経験があり、年齢や体力の面から雇用が困難になった方
- 50歳に達している、または障害基礎年金1級を受給している方
- 就労移行支援事業者によるアセスメントにより、就労面に関する課題などの把握が行われている方
基本的には就労移行支援の利用経験がある方や、就労経験のある方が対象ですが、自治体によって要件が異なる場合もあります。
就労継続支援A型・就労移行支援との違い
B型事業所と、ほかの障害福祉サービスとの違いを表にまとめました。
就労継続支援B型 | 就労継続支援A型 | 就労移行支援 | |
利用対象者 | 雇用契約を結んでの就労は困難だが、必要な支援を受けながらの就労は可能だと見込まれる方。 | 一般企業への就労は困難だが、必要な支援を受けながら雇用契約を結んでの就労は可能だと見込まれる方。 | 一般企業への就職を目指しており、訓練や支援により実現可能だと見込まれる方。 |
雇用契約の有無 | なし | あり | なし |
年齢制限 | なし | 原則18〜64歳。※条件により、65歳以降も継続できる場合あり。 | 原則18〜64歳。※条件により、65歳以降も継続できる場合あり。 |
利用可能な期間 | 制限なし | 制限なし | 原則2年(最長3年) |
利用者が受け取る平均工賃(令和5年度) | 23,053円 | 86,752円 | 就労ではないため、原則支給なし。 |
障害福祉サービスの種類によって、雇用契約の有無やサービスの目的などが異なるため、就職先を決める際の参考にするとよいでしょう。
就労継続支援B型の人員基準
B事業所の人員基準を表にまとめました。
職種 | 配置基準 |
管理者 | 常勤で1名※業務に支障がなければ、他職種との兼務可能 |
サービス管理責任者 | 常勤で1名・利用者が60名までは1名、以降40名またはその端数を増すごとに1名を追加で配置(追加で配置する場合は非常勤も可)※業務に支障がなければ、管理者との兼務可能 |
職業指導員 | 利用者10名までは1名、以降10名またはその端数を増すごとに1名を追加で配置 |
生活支援員 | 利用者10名までは1名、以降10名またはその端数を増すごとに1名を追加で配置 |
職業指導員と生活支援員のうち、いずれか1名は常勤である必要があります。
就労支援B型事業所の仕事内容
B型事業所で働く職員の仕事内容を、職種別に見ていきましょう。
管理者の仕事内容
管理者の主な仕事内容は、以下の通りです。
- 施設運営の管理
- 職員の採用・教育・評価やシフト管理
- 利用者が安全に働くための環境整備
- ハローワークや障害者就業・生活支援センターへの営業活動
- 利用者の労働時間の管理・法令を遵守できているかどうかの確認と指導
- 利用者やご家族に対するサービス内容の説明および見学対応
事業所の運営責任者として、利用者に質の高いサービスを提供できるようさまざまな業務を担っています。
サービス管理責任者の仕事内容
サービス管理責任者の主な仕事内容は、以下の通りです。
- 利用者の個別支援計画の作成
- 定期的な計画の見直しと評価
- 相談支援事業所や就労移行支援事業所との情報共有
- 施設内の職員との情報共有
- 職員への支援方法の助言・指導
利用者1人ひとりに適切なサービスを提供するために、施設内外と連携しながら個別計画を作成する、重要な役割を担っています。
職業指導員の仕事内容
職業指導員は、利用者の就労を直接的にサポートする職種です。
- 利用者への作業指導
- 作業に関わる品質や在庫、納期などの管理
- 作業環境の安全管理
- 利用者のスキルや工賃向上のための支援
B型事業所で行う主な生産活動は、パン作りや部品の組み立て、農業や事務作業などです。
サービス管理責任者が作成した個別支援計画に基づき、利用者が自身の特性やスキルを伸ばして工賃につなげられるよう、必要な支援や助言を行います。
生活支援員の仕事内容
生活支援員は、利用者の生活面をサポートするのが主な役割です。
- 利用者の金銭管理、対人関係などに関する相談支援
- 利用者の健康管理
- 利用者同士や職員とのコミュニケーション支援
- 自力での通所が難しい利用者のための送迎業務
利用者の健康や生活の基盤が安定すると、利用者やご家族が安心し、長期的な就労にもつながります。
就労支援B型事業所の職員に必要な資格
B型事業所の職員に必要な資格や、持っていると現場で役立つ資格を職種別に見ていきましょう。
管理者
以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 社会福祉主事任用資格
- 社会福祉事業に2年以上従事
- 企業経営の経験
- 社会福祉施設長認定講習会を修了
事業所運営を担う職種のため、障がい者福祉に関する幅広い業務経験を積んでおくことが望ましいです。
サービス管理責任者
以下すべての要件を満たす必要があります。
- 既定の分野・職種での実務経験(3~8年)
- 相談支援従事者初任者研修の講義部分の一部を受講
- サービス管理責任者等の基礎研修・実践研修の受講
- サービス管理責任者等更新研修の受講(5年ごと)
サービス管理責任者の人員確保に苦労する事業所が多く、一定の要件を満たしたうえでのみなし配置などの緩和措置が設けられています。
サービス管理責任者になる方法についてくわしく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
職業指導員・生活支援員
いずれも資格要件はありませんが、以下のいずれかの資格があると、より専門的な支援が可能になります。
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 介護福祉士
- 介護福祉士初任者研修
上記のうち、最も取得しやすいのは介護福祉士初任者研修です。
受講要件がなく、130時間の研修受講と修了試験に合格すれば取得できるので、現在無資格の方は検討してみましょう。
就労支援B型事業所の職員の給料
B型事業所の職員の平均給料を、職種別にまとめました。
職種 | 常勤 | 非常勤 |
管理者 | 306,743円 | 167,842円 |
サービス管理責任者 | 280,134円 | 150,100円 |
職業指導員 | 227,705円 | 104,759円 |
生活支援員 | 210,106円 | 95,956円 |
(出典:厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果(p.28)」)
収入アップを希望する方は、管理者やサービス管理責任者を目指すことも選択肢のひとつです。
まとめ

就労継続支援B型での支援業務は、障がいや病気のある方の就労意欲に寄り添い、利用者一人ひとりが自分らしく活動できるようサポートするやりがいのある仕事です。
障がい者福祉事業に興味のある方は、B型事業所の求人情報を探したり、事業所見学に行ったりして就職を検討してみてはいかがでしょうか。
監修者:中谷ミホ(社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、保育士)
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