2024年4月から、介護に直接携わる職員に認知症介護基礎研修の受講が必須になったことをご存知でしょうか?
これにより、無資格・未経験の介護職員も、認知症ケアの基礎知識を身につけた状態で業務にあたれます。
本記事では、認知症介護基礎研修が義務化された背景や講座内容、eラーニングでの受講方法などをくわしく解説します。
介護職員として就職を検討している方には必須となる研修ですので、ぜひ参考にしてください。
認知症介護基礎研修とは
認知症介護基礎研修とは、その名の通り認知症介護に関する基礎的な知識、および技術を習得するための研修です。
政府が策定した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」に基づいて2016年度から開始されました。
なお、さらなるスキルアップを目指したい人向けに「認知症介護実践者研修」「認知症介護実践リーダー研修」なども用意されています。
介護職員の受講が義務化された背景
2024年4月から、介護職員に認知症介護基礎研修の受講が義務化された背景には、高齢化が進む日本における認知症患者の増加があります。
2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になるという試算も出ており、介護のあらゆる現場で関わる可能性がある身近な病気です。
介護未経験かつ無資格の人が認知症患者に適切に関わるのは難しく、お互いにストレスを抱えてしまう恐れもあります。
認知症介護基礎研修を義務化することで、すべての職員が認知症ケアの基礎知識を有した状態で業務にあたり、質の良い介護を提供する狙いがあります。
研修を受けないとどうなるのか
2024年4月以降、認知症介護基礎研修を受講していない方は、介護サービス事業所で介護職員として働くことができなくなっています。
ただし、事業所に新しく採用された職員は、採用後1年以内に認知症介護基礎研修を受講すれば、引き続き介護職員として就労可能です。
認知症介護基礎研修の対象者
認知症介護基礎研修は、介護に直接携わる職員に受講が義務づけられていますが、保有資格などにより免除される人もいます。
ここからくわしく見ていきましょう。
受講が義務づけられている対象者
対象となるのは「事業所が新たに採用した従業者(新卒・中途問わず)で、医療・福祉関係資格を有さない者」です。
ただし、以下に該当する職種や、利用者の直接介護に携わる可能性のない職員には受講義務がありません。
- 無資格者がいない訪問系サービス(訪問入浴介護を除く)
- 福祉用具貸与
- 居宅介護支援
また、外国人介護職員に関しても、医療・福祉関係の資格がなく直接介護に携わる可能性がある場合は受講が義務づけられます。
受講の義務を免除される人
認知症介護基礎研修の受講義務を免除される医療・福祉に関する資格の一例は以下の通りです。
- 医師・歯科医師・薬剤師
- 看護師・准看護師
- 介護福祉士・介護福祉士実務者研修修了者・介護職員初任者研修修了者・生活援助従事者研修修了者・介護職員基礎研修課程または訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・あん摩マッサージ師・はり師・きゅう師
- 管理栄養士・栄養士
- 社会福祉士・介護支援専門員・精神保健福祉士 など
上記以外にも、養成施設や福祉系高校で認知症にかかる科目を受講していれば免除の対象となることがあります。
なお、認知症サポーター等養成講座修了者や、民間の認知症に関する資格保有者は免除の対象外です。
自分が持っている資格や学歴が免除の対象になるかわからない場合は、自治体に問い合わせてください。
認知症介護基礎研修はeラーニングで受講可能
認知症介護基礎研修は、原則eラーニングで行うことになっています。
eラーニングとは、オンラインで講義動画を見て確認テストを受ける学習方法で、インターネット環境があればパソコンやタブレットなどで受講可能です。
また、英語や中国語などの複数の言語に対応しているほか、視覚や聴覚にハンデのある人の受講にも対応しています。
ここからくわしい受講方法や受講費用などを見ていきましょう。
受講方法
eラーニングで受講する場合の受講の流れは以下の通りです。
1.事業所登録
eラーニング専用サイトの「事業所登録フォーム」から、事業所登録を行います。
登録には、事業所のメールアドレス・介護保険事業所番号が必要です。
事業所登録が完了すると、登録した事業所のメールアドレスに「事業所コード」が送信され、事業所の担当者が受講希望者に通知します。
2.受講申込
eラーニング専用サイトの「受講申込はこちら」から、受講申込を行います。
この時、受講料の支払い手続きも行いますが、受講料は受講者自身が支払うほか事業所が負担することも可能です。
事業所が支払う場合は事業所登録後に「ライセンスキー購入」が必要なので、誰が支払うのかを事前に確認しておきましょう。
受講料の入金が確認された後、登録したメールアドレスに「ログインID」が記載されたメールが届きます。
3.受講
eラーニング専用サイトからマイページにログインし、受講を開始します。
eラーニングは序章と4つの章で構成されていますが、すべてを一度に視聴する必要はありません。
空いた時間に1つの学習項目だけ受講するなど、自分のペースに合わせて学習を進められます。
すべての章の受講が完了すると、マイページから修了証書がダウンロードできます。
受講費用
受講費用は自治体により異なりますが、eラーニングの場合、3,000円であることが多いです。
なお、実施主体の都合でeラーニングの実施が難しく、集合型の講義・演習を行う場合は費用が異なるケースもあります。
受講内容
eラーニングによる受講内容を表にまとめました。
はじめに | 研修の目的説明・学習前の確認問題 |
序章 | 認知症を取り巻く現状 |
第1章 | 認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方 |
第2章 | 認知症の定義と原因疾患 |
第3章 | 認知症の中核症状と行動・心理症状の理解 |
第4章 | 認知症ケアの基礎技術 |
第1章〜第4章の各動画の視聴後に確認テストがあり、合格すると次の章に進める仕組みです。
すべての動画の合計所要時間は150分程度で、テストの時間を含めても最短1日あれば受講完了できます。
認知症介護基礎研修と介護職員初任者研修の違いは?
それぞれの違いを表にまとめました。
認知症介護基礎研修 | 介護職員初任者研修 | |
研修の目的 | 認知症ケアの基礎を身につける | 介護の基本知識と技術を身につける |
受講費用 | 約3,000円 | 約6~8万円 |
受講内容 | 認知症の知識とケア方法の基本 | 介護や認知症の基礎理解福祉サービスの理解実技演習 など |
受講方法 | eラーニングが主流 | 通学または通信学習+スクーリング |
受講期間 | eラーニングの場合150分程度 | 130時間 |
介護職員初任者研修は受講期間も費用もかかりますが、介護の実技演習もあり、より現場で役立つスキルを習得できます。
一方、認知症介護基礎研修は受講の費用と期間を抑えられるので、一刻も早く介護職員として現場で働きたい人におすすめです。
自分の希望や今後のキャリアプランに応じて受講する研修を選びましょう。
まとめ
2024年4月から、直接介護にあたる職員に認知症介護基礎研修の受講が義務化された背景には、国内の認知症患者数の増加があります。
介護職員が認知症ケアの知識を身につけることで、認知症患者に適切な関わりができるようになり、利用者の心身の安定につながります。
eラーニングを利用すれば最短半日で受講できるので、無資格など、受講義務の対象になる人は職場と相談して適切な時期に受講しましょう。
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