
就労支援員とは、障害のある人が自分に合った働き方を見つけ、職場で安定して働けるようサポートする専門職です。福祉や人の成長に関わるやりがいのある仕事として注目されています。
本記事では、就労支援員の具体的な仕事内容、活躍できる職場、必要な資格やスキルをわかりやすく解説します。福祉業界でのキャリアを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
就労支援員とは
就労支援員は、障がいや難病のある方の「働きたい」という思いを実現するため、就職準備から職場定着までを支援する専門職です。
支援の対象者は、身体・知的・精神障がいのある方に限りません。発達特性のある方や難病を抱える方、引きこもりや経済的に困窮している方など、さまざまな背景をもつ方が対象です。
支援員は、こういった方々が社会のなかで自分らしく働けるように、就労の準備から職場環境の調整、勤務先での定着支援まで幅広く関わります。
一人ひとりの強みを見つけ、それを活かせる職場と結びつけることで「働きたい」という気持ちを実現させるのが、就労支援員の役割です。
就労支援員の主な仕事内容
就労支援員の主な仕事内容は、次の3つに分けられます。
- 求職者への指導
- 関係機関との連携
- 就職後のサポート
それぞれの内容について、詳しくみていきましょう。
求職者への指導
利用者ごとの個別支援計画にもとづき、就労に向けたさまざまなサポートを行います。
就労には、企業で通用する技術だけでなく、ビジネスマナーや社会的なコミュニケーション力も欠かせません。
そのためWordやExcelなどPC操作の練習のほか、電話応対や名刺交換などのビジネスマナー指導を通じて、実践的なスキルを身につけられるように支援します。
また、履歴書の作成や添削、面接練習、求人探しなど、就職活動そのものも丁寧にサポートします。
必要に応じてハローワークへの同行や企業面接への付き添いをし、利用者が安心して就労できるように寄り添うのも支援員の役割です。
関係機関との連携
就労支援員は、利用者と企業・関係機関をつなぐ橋渡し役になります。利用者に合った職場を見つけるために、ハローワークの担当者や地域の企業と連携しながら、実習先や就職先の候補を調整します。
企業を訪問し、障がい者雇用や職場受け入れへの理解を促す働きかけも欠かせません。利用者の職場見学や実習の際には同行し、本人の特性や希望を企業担当者に説明し、双方が安心して関わりをもてるように支援します。
このように、就労支援員は利用者だけでなく、企業や関係機関とも信頼関係を築き、スムーズな就労につなげる大切な役割を果たしています。
就職後のサポート
利用者が安心して働き続けられるように、就職後の職場定着をサポートすることも就労支援員の仕事です。
具体的には、定期的に面談を通じて仕事上の悩みや不安を聞き取り、必要に応じて職場を訪問します。その際、上司や同僚など企業側の担当者とも情報を共有し、利用者がより働きやすい環境を一緒に整えていきます。
勤務内容の調整や職場環境の改善が必要な場合、解決には企業との協力が欠かせません。
こうした定期的なフォローを通じて、利用者が自信をもって働けるように支援することが、就労支援員の重要な役割です。
就労支援員の主な勤務先
次に、就労支援員の主な勤務先を紹介します。それぞれの事業所で対象となる方や支援の目的が異なるため、自分がどのような支援に関わりたいかを考えるための参考にしてください。
就労移行支援事業所
65歳未満で身体・精神・知的障がいなどがあり、一般企業への就職を目指す方を対象とした事業所です。
最長2年間にわたり職業訓練や就職先の紹介、面接の練習などを行い、就労の定着まで支援します。
就労継続支援A型事業所
65歳未満の障がいのある方で一般企業で働くことが難しい人を対象に、雇用契約にもとづいて製造業や飲食業、農業などの生産活動を行ってもらう場所を提供します。就労支援員の仕事内容には、利用者の作業管理や業務指導などがあります。
就労継続支援B型事業所
年齢や体調などの理由から、雇用契約を結んで働くことのできない方が利用する事業所です。
利用者は自分の体調やペースに合わせて、部品の組み立てやパン作りなどの作業を行います。
就労支援員は作業管理や業務管理に加え、利用者の体調管理や日常生活上の相談に応じたり、社会生活技能を高めるための活動(SST・スーシャルスキルトレーニング等)を行ったりすることもあります。
福祉事務所
主に生活保護受給者や、ひとり親家庭の親への就職をサポートし、面接の練習や履歴書の指導などを行います。
また、ハローワークへの同行による求人探しや手続きのサポートなども業務に含まれます。
障害者就業・生活支援センター
就職に関する支援だけでなく、金銭管理や健康管理など、日常生活の困りごとの相談にものる公的な支援機関です。身体・知的・精神障がいに加え、発達障がいや難病のある方など、支援の対象者は多岐に渡ります。
ハローワークや地域の福祉施設、医療機関などのさまざまな機関と連携し、就業と生活の両方から一体的にサポートします。
就労支援員になるために必要な資格
就労支援員になるために、法律で定められた必要な資格はありません。実際に、就労支援に関わる求人のなかには「職種未経験歓迎」「学歴不問」としている職場もみられます。
「人と関わることが好き」「誰かのために働きたい」という気持ちがあれば活躍できる仕事です。
とはいえ障がいや福祉に関する専門的な知識が求められる場面も多いため、関連資格をもっていたほうが支援の幅が広がり、採用面でも有利になります。
以下の5つの資格は、就労支援員として働くうえで役立つ代表的なものです。未経験からスタートした場合でも、将来的にこれらの資格取得を目指すことで、キャリアアップにつながるでしょう。
| 資格名 | 資格の特徴 |
| 社会福祉士 | 福祉全般に関する高度な専門知識をもつ国家資格相談援助業務のプロとして信頼性が高く、幅広い分野で活躍できる |
| 精神保健福祉士 | 精神障がいのある方の支援に特化した国家資格体調や心理的ストレスの管理をしたり、医療機関・企業と連携したりする際に重宝される |
| 介護福祉士 | 身体介助を必要とする利用者がいる場合、介護の専門知識を活かして関われる |
| 社会福祉主事任用資格 | 病気や障がい、貧困などにより、生活に困っている方の相談援助を行う資格福祉事務所での就労支援に関われる |
| 児童指導員任用資格 | 障がいのある子どもの療育や生活支援を行うための資格 放課後等デイサービスなど児童福祉分野での経験を活かせるほか、10代など若年層の利用者を支援する際にも役立つ場合がある |
「障害者就労支援士」という新しい資格の創設が検討されています。これは、障がい者の就労支援に必要な一定の知識と技能を有していることを証明する資格で、今後の制度整備に合わせて注目が高まる可能性があります。
現時点では構想段階ではありますが、今後の動向を追っておくことで、将来的なキャリア形成に役立つ情報を得られるでしょう。
参考:厚生労働省「障害者就労支援士検定(仮称)モデル試験科目及びその範囲並びにその細目(案)」
就労支援員の給与
就労支援員の平均給与(月額)は、常勤で約23万4,000円、非常勤で約13万6,000円です。
これらは無資格者を含む全体平均であり、勤務先の種類や地域、経験年数などによっても差があります。
また、職場によっては特定の資格(社会福祉士・精神保健福祉士など)の取得を応募要件としている場合もあり、資格手当の支給により月給も上がる傾向です。
参考:厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」
就労支援員のやりがい
就労支援員のやりがいには以下のようなものがあります。
- 傾聴力・営業力・調整力など、幅広いスキルを磨ける
- 利用者が自信を取り戻し、就労を果たす瞬間に寄り添える
- 共生社会の実現や労働力不足の解消に貢献できる
成果が出るまで時間がかかることもありますが、利用者の笑顔や感謝のことばが大きな励みとなり、自分自身の成長も実感できるやりがいのある仕事といえます。
まとめ

就労支援員の仕事は、障がいの有無を問わず、さまざまな背景をもつ方たちの「働きたい」という思いを支えるやりがいの大きい仕事です。
未経験や無資格から挑戦できる職場もあるため、まずは求人サイトやハローワークなどで募集を探してみるのも良いでしょう。
経験を重ねながら資格を取得し、専門性を高めていくことで、より多くの人の就労を支援できるようになります。
社会に貢献できる就労支援員の仕事に興味のある方は、ぜひ挑戦してみてください。
監修者:中谷ミホ
社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、保育士


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