
福祉の仕事を検討するなかで「移動介護従事者(ガイドヘルパー)とは、どのような仕事なの?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ガイドヘルパーの仕事内容や資格の取得方法、給料などをくわしく解説します。
障がい者支援に興味のある方は、ぜひ最後までお読みください。
ガイドヘルパーとは
ガイドヘルパーは、障がい者(児)の社会生活上必要不可欠な外出や、社会参加のための外出をサポートする職種です。
具体的な外出先は、以下のような日常生活に欠かせないもののほか、趣味や余暇活動を目的としたものも含まれます。
- 通院
- 買い物
- 散歩
- スポーツジム
- 映画館
- 冠婚葬祭 など
通勤や営業活動などの経済活動に関わる外出や、通学や長期間の通院といった通年かつ長期にわたる外出などは、支援の対象外です。
ガイドヘルパーは国家資格ではなく、都道府県または市町村の管轄による公的資格となっています。
ガイドヘルパーの種類
ガイドヘルパーは、支援者の障がいや支援内容によって大きく3種類に分けられます。
概要を表にまとめました。
ガイドヘルパーの種類 | 対象者 |
同行援護従事者 | <身体介護なし>視覚障害者(児)かつ同行援護アセスメントの基準を満たす者。 <身体介護あり>上記に加えて①障害支援区分2以上②障害支援区分調査項目のうち「歩行」に関して「全面的な支援が必要」に認定、または「移乗」「移動」「排尿」「排便」のいずれかが「支援が不要」以外に認定 |
行動援護従事者 | 知的障害や精神障害、発達障害などがある児童や大人で、以下のいずれにも該当する者。 ①障害支援区分3以上②障害支援区分認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上 |
全身性障害者移動介護従事者 | 障害支援区分4以上に該当し、次の①または②のいずれかに該当する者 ①2肢以上に麻痺などがあり、障害支援区分調査項目のうち「歩行」「移乗」「排便」のいずれもが「支援が不要」以外に認定②障害支援区分認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上 |
利用者の年齢や障がいについて事前に把握し、適切な支援と介助を行うことが大切です。
ガイドヘルパーが働く場所
ガイドヘルパーが活躍している主な職場を以下にまとめました。
- 移動支援事業所
- 居宅介護事業所
- 訪問介護事業所
- 障害福祉サービス事業所
- 社会福祉協議会 など
ガイドヘルパーの主な働き方は「正社員」「登録ヘルパー」の2種類あります。
正社員として働く場合、介護施設や訪問介護事業所に就職し、移動支援以外の介護業務も兼務するのが一般的です。
登録ヘルパーは、希望する曜日や時間を選んで働けるメリットがある一方で、常に希望するタイミングで仕事があるとは限らないデメリットもあります。
ご自身のライフスタイルや望む収入などに応じて、働き方を選択しましょう。
ガイドヘルパーの仕事内容
ガイドヘルパーが利用者をどのように支援するのか、種類別にくわしく解説します。
同行援護の仕事内容
- 現在時刻や周囲の状況、段差の有無などをわかりやすく伝える
- 役所や病院などでの書類の代筆や、カフェに入った際のメニューの代読
- 「身体介護あり」の場合は排せつや食事などの介護
視覚障害のある児童や大人をサポートするため、目が不自由でも安心して移動できるように利用者の年齢に応じた言葉で説明する能力が必要です。
コンサートやスポーツ観戦に同行する際は、演者の様子や試合の模様など、変化していく状況を的確に伝えられると喜ばれるでしょう。
行動援護の仕事内容
- 外出の行程を順序立てて説明し、利用者の不安を和らげる
- 外出中、予想外の出来事が起きた際の利用者の精神状態をサポート
- 食事や排せつ、外出前後の着替え介助
行動援護は知的障害や精神障害、発達障害のある児童や大人の外出を支援します。
外出中に予想外の出来事が起こるとパニック状態に陥る場合があるため、出発前にその日の行程を説明しておくと、利用者の不安を緩和できます。
しかし実際の外出中には不測の事態が起こりうるため、利用者の安全を確保しつつ臨機応変に対応できるよう準備しておきましょう。
利用者の心身の状態に応じた身体介護も仕事のひとつです。
全身性障害者移動介護従事者の仕事内容
- 車いすによる移動介助
- 食事、排せつなどの介助
全身性障害を持つ方の移動支援は、基本的に車いすで行います。
歩道の小さな段差やスロープを進む際、どのように操作すると利用者の不安や恐怖が軽減されるかを把握しておくと、スムーズに介助できるでしょう。
ガイドヘルパーの資格取得方法
ガイドヘルパーの資格を取得するには、種類に応じた研修を修了し、自治体によっては介護職員初任者研修以上の資格が必要な場合もあります。
順番に見ていきましょう。
同行援護従事者
同行援護従事者になるには「同行援護従業者養成研修」の、一般課程の修了が必要です。
さらに同行援護のサービス提供責任者になるには、応用課程の修了が必須となります。
一般課程は受講資格がなく誰でも受講でき、応用課程は一般課程を修了すると受講できます。
研修期間や費用はスクールにより異なりますが、目安としては以下の通りです。
受講期間 | ・一般課程:4~20日間・応用課程:1日間 |
研修時間 | ・一般課程:28時間・応用課程:6時間 |
受講費用 | ・一般課程:約5万円・応用課程:1.5~2.5万円 |
一般課程と応用課程をまとめて受講することで、受講料が割安になるスクールもあります。
行動援護従事者
行動援護従事者になるには「行動援護従業者養成研修」の修了が必要です。
研修期間や費用の目安は以下の通りです。
受講期間 | 3~20日間 |
研修時間 | 24時間 |
受講費用 | 3~5万円程度 |
なお「介護福祉士や実務者研修修了者等を行動援護従業者養成研修課程修了者とみなす」という経過措置は、令和9年3月31日まで延長し、その後廃止となります。
自治体によっては要件が異なる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
全身性障害者移動介護従事者
全身性障害者移動介護従事者になるには「全身性障害者ガイドヘルパー養成研修」の修了が必要です。
受講要件は特にありませんが、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修、介護福祉士の資格保有者は、一部科目や演習の免除を受けられる場合があります。
研修期間や費用の目安は以下の通りです。
受講期間 | 2~60日間 |
研修時間 | 自治体により異なる |
受講費用 | ・科目免除なし:3万円程度・科目免除あり:2万5千円程度 |
全身性障害者ガイドヘルパー研修に関しては、地域により研修時間や科目、費用などに違いがあるため、必ず自治体の要綱を確認しましょう。
ガイドヘルパーの給料
ガイドヘルパーの給料は地域や就職先によって異なりますが、大まかな目安は以下の通りです。
- 常勤の場合・・・22~27万円程度
- 非常勤の場合・・・時給1,500~2,500円
常勤の場合は、市町村の社会福祉協議会の職員と同じくらいの水準だと考えてよいでしょう。
まとめ

ガイドヘルパーは、障がいのある人が外出して趣味や余暇活動を楽しむためのサポートをする、やりがいのある仕事です。
さらに、障がいのある人もない人も、地域社会で共に生活する「インクルーシブ社会の実現」に向けても、ガイドヘルパーは重要な役割を担っています。
障がいを持つ子どもや大人の外出支援に興味のある方は、ぜひガイドヘルパーの資格取得を検討してみましょう。
監修者:中谷ミホ
社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、保育士
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