
特別養護老人ホーム(特養)への就職や転職を考えるとき「ユニット型」と「従来型」の違いを疑問に思う人もいるかもしれません。どちらも同じ特養ですが、施設の構造からケアの方法、職員の働き方まで大きく異なります。
この記事では、「ユニット型」と「従来型」の特徴や働き方の違い、メリット・デメリットを解説します。ご自分に合った職場選びの参考にしてください。
そもそも特別養護老人ホーム(特養)とは?
特別養護老人ホーム(特養)は「介護老人福祉施設」とも呼ばれ、社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な介護保険施設です。
対象者
常に介護が必要で、自宅での生活が困難な原則要介護3以上の方。
役割:
生活全般の介助(食事、入浴、排泄など)や機能訓練、健康管理、療養上の世話を提供します。看取りまで対応する施設も多く「終の棲家」としての役割もあります。
特養には「従来型」と「ユニット型」の2タイプがあり、近年新設される特養は、国の施策(※)により原則「ユニット型」となっています。
しかし、歴史の長い「従来型」も多く存在するため、介護職として働くには両者の違いを理解しておくことが重要です。
(※厚生労働省は、プライバシー保護や個別ケア推進のため、2003年度以降新設の特養は原則ユニット型個室としています。)
従来型とユニット型の住環境の違い
従来型とユニット型の住環境の違いは以下の通りです。
従来型:多床室が中心
「多床室(たしょうしつ)」と呼ばれる2〜4人での相部屋が中心です。食堂や浴室なども共用で、集団生活の雰囲気が強いのが特徴です。カーテンなどで仕切られますが、プライバシーの確保が難しい側面があります。歴史が長いため、介護ノウハウが蓄積されているのが強みです。
ユニット型:全室個室の少人数グループ
全室個室(または準個室)で、10人前後の少人数グループを1つの「ユニット」として生活します。ユニットごとに個室と共同スペース(リビング・ダイニングなど)が配置され、「家庭の延長」のような感覚で過ごせるのが特徴です。
従来型とユニット型の働き方とケア方法の違い
従来型とユニット型の「働き方」にも違いがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
従来型の働き方:チームで効率的に動く「集団ケア」
フロアにいる数十人の入居者を、複数のスタッフがチームでケアします。食事、入浴、就寝など、日課に沿ってケアを一斉に行う「集団ケア」が基本です。
そのため、多くの入居者を効率的かつ安全に介助するスキルが求められ、フロア全体の状況を把握し連携する「チームプレー」が中心となります。
夜勤も複数人体制が基本で、緊急時も協力して対応できます。1回の勤務時間が16時間前後の「ロング夜勤」(例:17時〜翌9時)が主流で、夜勤明けの翌日が休みになるため、休日をまとめて取りやすいと感じる人もいます。
ユニット型の働き方:一人ひとりに寄り添う「個別ケア」
ユニット型では「個別ケア」が基本です。画一的なケアではなく、担当ユニットの入居者(10名前後)一人ひとりの生活リズムや希望に合わせたケアを実践します。
少人数でユニットを担当するため、一人ひとりの裁量が大きく、個別の判断を任される場面が従来型より格段に多くなります。
夜勤体制では、8時間前後の「ショート夜勤」を採用する施設が多い傾向です。1人で夜勤を担当する可能性もあるため、事前に夜勤体制について確認しておくとよいでしょう。
従来型とユニット型で働くメリット・デメリット
働く上では、良い面と大変な面、両方を理解しておくことが大切です
従来型で働くメリット・デメリット
【メリット】
教育体制の安心感
スタッフ数が多く業務もシステム化されているため、未経験者や経験が浅い方も、先輩職員の指導を受けながら着実にスキルを身につけられます。
緊急時のチーム対応
夜勤を含め常に複数のスタッフがいるため、入居者の急変時にも一人で対応する不安が少なく、チームで協力して対処できます。
幅広い経験
多くの入居者やスタッフと関わるため、多様な介護ニーズに応じたケアの方法を短期間で学ぶことができます。
給与や制度の安定性
大規模法人が運営しているケースが多く、給与テーブルや昇給制度がしっかりしている傾向があります。
【デメリット】
流れ作業になりやすい
効率重視のため、日々の業務がルーティン化し「流れ作業」のように感じることがあります。
個別ケアの実践が難しい
一人ひとりとじっくり向き合う時間を確保しにくく、ジレンマを感じるかもしれません。
常に時間に追われる
スケジュール通りに進める必要があり、忙しく時間に追われる感覚を持ちやすいです。
ユニット型で働くメリット・デメリット
【メリット】
「個別ケア」を実現できる
一人ひとりと深く関わり信頼関係を築きやすいため、個別ケアを実践でき、大きなやりがいを得られます。
自分のペースで仕事ができる
ユニットごとの裁量が大きく、落ち着いた環境で自分のペースでケアを組み立てやすいです。
新しく快適な職場環境
国の施策により、新しく建設(あるいは改修)された施設が多いため、設備や建物が新しい職場で快適に働けます。
【デメリット】
責任の重さと精神的プレッシャー
ユニット型では、職員個人に判断を任される機会が多いというデメリットがあります。特に夜勤を1人で担当する場合、プレッシャーや業務負担を感じることもあるでしょう。
幅広い業務スキルが必須
身体介護に加え、コミュニケーション、家事、ケア計画の立案など、幅広い知識とマルチタスク能力が求められます。
濃密な人間関係
少人数チームのため、職員同士や入居者との関係が密になります。良好なら良いですが、こじれるとストレスになる可能性もあります。
あなたはどちらに向いている?職場選びのヒント
最後に、自分に合った職場を選ぶためのポイントを紹介します。
こんなあなたは「従来型」向きかも?
大人数の中で働きたい方には、従来型がおすすめです。特に介護職が初めての方や新人の方は、先輩スタッフから学べる機会が豊富な従来型が向いているでしょう。夜勤時も複数人体制で対応できる安心感があります。
こんなあなたは「ユニット型」向きかも?
利用者一人ひとりとじっくり向き合いたい方、個別ケアにやりがいを感じる方には、ユニット型がおすすめです。個人の能力を発揮したい方や、将来的にリーダーシップを身につけたい方にも適しているでしょう。
求人応募時のチェックポイント
求人に応募する際は、施設がどちらのタイプなのか必ず確認しましょう。夜勤体制(時間や人数)についても事前に確認し、可能であれば職場見学をして実際の雰囲気を確かめることをおすすめします。
まとめ

特別養護老人ホームには従来型とユニット型があり、施設の構造や働き方に大きな違いがあります。従来型では大人数の入居者をチームで介護するのに対し、ユニット型では少人数の入居者に個別ケアを提供します。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分に合うのはどちらのタイプかを見極めることが大切です。
求人に応募する前に施設のタイプをしっかり確認し、できれば職場見学をすることをおすすめします。自分の特性や希望する働き方に合った職場を選ぶことが、長く安心して働き続けるためのポイントです。


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