福祉の分野で働きたいと思う方の中には「理学療法士とはどんな資格なのだろう?」「仕事内容や働く場所を知りたい」と疑問をもつ方もいるのではないでしょうか?
そこで本記事では、理学療法士の仕事内容や働く場所を紹介し、資格の取得方法についても解説します。
理学療法士とはどんな資格?
理学療法士は、病気やけがにより障害を負った方や、障害の発生が予測される方にリハビリテーションを提供し、自立した日常生活を送れるよう支援する専門資格です。
リハビリテーションは、ラテン語の「re(再び)+habilis(適する)」ということばが語源です。
日本では「人間の尊厳や権利を回復すること」を目的に、「全人間的復権」と訳されるようになりました。
理学療法士は、人間の基本的な動き(立つ・座る・歩くなど)の回復に向けて、「理学療法を用いたリハビリテーション」を提供します。
理学療法士の仕事内容
理学療法士の主な仕事内容は、以下のとおりです。
- 評価
- 理学療法
- 住環境整備・福祉用具や補装具の選定
- 多職種との連携
評価
評価とは、治療方針を立てるために検査や測定を行うことです。
対象者の運動機能(筋力・柔軟性・バランスなど)や動作能力(どれくらい動けるか)を把握します。
評価の結果を多職種と情報共有したうえで、リハビリテーションの目標と理学療法プログラムを決めます。
理学療法(運動療法・物理療法)
理学療法とは、以下2種類の治療法を指します。
- 運動療法:筋力トレーニング、関節のかたさを和らげる運動、バランスを良くする練習、動く練習など
- 物理療法:温熱、電気、レーザー、マッサージなど
これらにより、身体の動きの維持・改善を目指します。
住環境整備・福祉用具や補装具の選定
住まいの環境整備や日常生活で使う物品の選定、調整なども理学療法士の仕事です。
内容は以下のとおりです。
- 手すりの選定や住宅改修のアドバイス
- 安全に移動するために必要な杖や歩行器などの選定
- 手や足の動きをサポートする義肢や装具などの選定
整備・選定後には、安全に動けているか、身体の状態に合っているかなどのチェックもします。
多職種連携
対象者に関わる専門職種がそれぞれの専門性を活かし、目標に向かって支援していくことを多職種連携といいます。
主に以下の職種と連携します。
- 医師
- 看護師
- 介護職員
- 薬剤師
- 管理栄養士
- ケアマネジャー
- ソーシャルワーカー
- 作業療法士・言語聴覚士など
リハビリテーションを円滑に進めていくためには、多職種での連携が欠かせません。
介護・福祉施設における仕事内容
理学療法士は、病院以外にも介護老人保健施設や介護老人福祉施設といった、介護・福祉施設にも勤務しています。
施設で働く理学療法士は、先述した仕事内容に加えて、以下のような仕事も担当します。
- 「在宅支援」や「生活支援」の視点から、対象者やその家族へ指導や相談を行う
- 生活リハビリを提供する際、多職種へ注意点や介助のポイントなどをわかりやすく伝える
生活リハビリとは、対象者が日常生活でできることを行い、運動機能や動作能力の維持・向上を図ることです。
たとえば、食事や排泄などをひとりで行えない方に対して、すべてを手伝うことはしません。できることはやってもらうように促します。
生活リハビリでは、日頃から対象者に関わる介護職員や看護師などにも働きかけ、協力をあおぐことが大切です。
日常生活のあらゆる場面をリハビリとしてとらえるため、具体的な介助方法や関わり方を教えることも、施設の理学療法士には求められます。
理学療法士が働く場所
理学療法士が働く場所には、以下のような職場があります。
- 医療機関
- 介護・福祉施設
- 障がい者(児)施設
- 行政(健康増進や介護予防)
- 訪問看護・訪問リハビリ
- スポーツ現場
- 養成校や研究職
少子高齢化や国民の健康増進への関心といった、さまざまな社会情勢から、理学療法士が活躍できる場所はさらに広がるといわれています。
理学療法士になる方法
理学療法士になるためには、以下の手順で国家資格を取得する必要があります。
- 養成校で3年以上学ぶ
- 国家試験に合格する
- 理学療法士免許を登録する
養成校で3年以上学ぶ
以下に挙げた理学療法士養成校のいずれかで、3年以上学びます。
- 4年制大学
- 3年制短期大学
- 3年制と4年制の専門学校
- 視覚障害者が対象の特別支援学校
養成校で学ぶ内容は、以下のように大きく分けられます。
- 一般教養
- 専門基礎科目
- 専門科目
- 臨床実習
養成校にはそれぞれ特色があり、どの学校を選んだらよいかがわからないという方もいるでしょう。
その際は、「将来活躍したい分野への就職がしやすいか」「国家試験の合格率が高いか」といった点から決めるのも、方法のひとつです。
国家試験に合格する
国家試験は「筆記試験」と「重度視力障がい者が対象の口述・実技試験」があります。
試験の内容は以下のとおりです。
- 理学療法士・作業療法士共通の「共通問題」が100問
- 理学療法士の「専門問題」が100問
それぞれ一般問題と実地問題が20問ずつあります。
試験の分野は以下のとおりです。
- 解剖学
- 生理学
- 運動学
- 病理学概論
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要
- 理学療法
国家試験の合格率は約80%前後で推移しており、毎年1万人以上が合格しています。
出典:厚労省
理学療法士免許を登録する
合格通知が届いたら、住所地の保健所(一部県については県庁)に申請し、厚生労働省が管理する有資格者籍簿への登録を済ませます。
これにより、医師の指示のもと、理学療法士と名乗って理学療法業務ができるようになります。
まとめ
理学療法士は、人間の基本的な動作の回復に向けて、理学療法を行うリハビリテーションの専門資格です。
近年は活躍できる場所が広がってきており、介護・福祉施設や行政、スポーツ分野など、さまざまなニーズに応えられる人材が求められています。
理学療法士は、対象者の社会復帰に関わる素晴らしい仕事です。
理学療法士の仕事に興味のある方は、養成校への入学を検討してみてはいかがでしょうか?
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