
近年、介護施設をはじめとした福祉業界全体で接遇マナーの重要性が注目されており、接遇マナーの研修を行う事業所も増えています。
本記事では接遇の意味や、介護や福祉業界の対人援助における接遇マナーの重要性を、くわしく解説します。
簡単な接遇チェックリストも紹介しているので、ぜひ最後までお読みください。
接遇とは?
接遇とは「相手を理解し、適切に迎えるおもてなしの心」のことです。
接客が「必要最低限のサービス提供」を意味するのに対し、接遇ではお客様1人ひとりの気持ちや要望を汲み取り、心に寄り添うサービス提供を行います。
また「メラビアンの法則」によると、人の第一印象は7.7秒以内で決まり、服装や清潔感が印象の大きな割合を占めると言われています。
言葉遣いや声のトーンなどの言語コミュニケーションはもちろん、服装や清潔感などの非言語コミュニケーションも接遇力を上げる重要な要素です。
介護と福祉業界で接遇マナーが大切な理由
利用者満足度の高い福祉サービスを提供するうえで、接遇マナーの向上は必須事項です。
ここから、接遇マナーが大切な理由4つを見ていきましょう。
利用者の尊厳を守る
接遇の意識が欠けていると、無意識のうちに利用者の尊厳を脅かす声かけをしてしまうことがあります。
一例として「そこから動かないでください!」「何回言ったら分かるんですか?」などの、職員側の都合のみに偏った発言があげられます。
接遇マナーを学ぶことにより、上記の事例でも「あと10分待っていていただけますか?」「今は○○をしていただけますか?」などの適切な声かけに変えられます。
利用者やご家族に安心感を与える
福祉の対人援助では、利用者の身体介護や生活介護を行う場面も多いです。
利用者のプライベートな領域にも踏み込むため、言葉遣いや態度が横柄な職員からは介護を受けたくないと感じるのはごく自然な感情だと言えます。
接遇マナーに基づいた寄り添いと思いやりのある対応をすることで、利用者やご家族も安心感を抱き、信頼関係を築きやすくなります。
利用者から選ばれる施設になる
介護施設の利用を検討するなかで、複数の施設を見学する人も少なくありません。
にこやかで適度に親しみやすい職員が多い施設と、無表情で事務的な対応に終始する職員が多い施設、どちらを利用したいと思うでしょうか。
接遇力の高い施設は利用者から選ばれやすくなり、ひいては施設の経営安定にもつながります。
職員のスキルアップにつながる
福祉業界は、職場によって支援する相手の年齢や身体状況もさまざまです。
接遇マナーを身につけることにより、目の前の利用者に寄り添った対応ができるようになり、質の高いサービス提供が可能になります。
よいサービスを提供できると利用者満足度が上がり、職員の仕事へのモチベーション向上にもつながる好循環が期待できるでしょう。
介護と福祉業界の接遇マナー基本の5原則【チェックリスト付き】
ここから、接遇マナー基本の5原則を紹介します。
各項目の冒頭に簡単なチェックリストを付けていますので、ぜひ参考にしてください。
挨拶・声かけ
- 自分から挨拶しているか
- 明るく聞き取りやすい声を出しているか
- 声のボリュームが大きすぎたり小さすぎたりしていないか
- 状況に応じてお辞儀をしているか
自分から明るく挨拶することで、おもてなしの心を伝えられます。
耳の聞こえにくい利用者に対しては少し大きめの声で話すのが望ましい一方で、必要以上に大きすぎる声は相手をびっくりさせてしまいます。
相手が聞き取りやすい、適切な声量での声かけが大切です。
見学対応やサービス担当者会議などで「今日はありがとうございました」という言葉と共にお辞儀をすると、利用者やご家族、他施設の職員にも好印象です。
ただし、過剰にへりくだると却って信頼関係を築きにくくなるため、状況に即した対応を心がけましょう。
言葉遣い
- 命令口調になっていないか
- 馴れ馴れしい言葉遣いになっていないか
- 愛称ではなく「苗字+さん付け」で呼称しているか
- 語尾は「~です・~ます」に統一しているか
「待ってください」「動かないでください」などは、「スピーチロック」という言葉で相手の行動を制限する行為にあたり、身体拘束になります。
「もうすぐ入浴の時間なので、ここで待っていただけますか?」「血圧を測るので、リラックスしてくださいね」などと、状況を説明しながら相手に寄り添う言葉選びをしましょう。
福祉業界によっては、利用者の生活の場で働くケースもあるため、過度にかしこまった言葉遣いをする必要はありません。
しかしながら、利用者を「〜ちゃん」と馴れ馴れしい呼び方をしたり、友達感覚で話しかけたりすると、相手の尊厳を傷つけてしまいます。
言葉に親しみを込めつつも、相手への敬意を忘れないことが大切です。
表情・笑顔
- 自然な笑顔で接しているか?
- 無表情や不機嫌な表情のまま業務にあたっていないか?
- 相手の話す内容に応じた表情や反応ができているか?
- マスクをしているときは、目元で表情を作れているか
明るくにこやかな表情で業務にあたることで、利用者も自然と話しかけやすくなります。
福祉業界や介護の現場は常に忙しく、余裕の無さからつい無表情になったり、苛立ちが顔に出てしまうことも珍しくありません。
時々鏡で自分の顔をチェックして、利用者に気を遣わせる状態になっていないか注意しましょう。
利用者が深刻な悩みを話しているときは、こちらも真剣な表情で話を聞くという風に、話に合った反応をすると「気持ちを分かってくれた」と感じやすいです。
マスクをしているときでも、目元の動きを意識するだけで、表情に変化をつけられます。
態度
- 常に正しい姿勢を維持しているか
- 利用者の前で壁にもたれたり、あくびやため息をついたりしていないか
- 利用者と目線を合わせた丁寧な対応ができているか
- 物を足で蹴ったり大きな音を立てたりして移動させていないか
介護や福祉の仕事は身体的にも精神的にも負担を感じやすいですが、業務中はプロ意識を持って、利用者の前でだらしない姿を見せないようにしましょう。
また、仕事に慣れてくると利用者を介護する際の動作や声かけが雑になったり、流れ作業のように事務的に行ったりしやすくなります。
常に初心を忘れず、利用者と目線を合わせて丁寧な動作を意識することが、利用者の安心感につながります。
職場の備品を持ち運ぶ様子や、扉の開け閉めなども、意外と利用者に見られているものです。
雑に扱ったり、大きな音を立てたりするなどの相手が不快に感じる動作を控えるだけでも、印象は大きく変わります。
身だしなみ
- 服装に清潔感があるか
- 時計やアクセサリーを身につけていないか
- 髪は業務の邪魔にならないよう整えているか
- 体臭や口臭のケアをしているか
服が汚れていたり、シワが目立っていたりすると、不衛生に感じられて介護拒否の要因になる場合もあります。
利用者と介護者、双方の感染症のリスクを下げるためにも、清潔な状態で介護を行うことが重要です。
時計やアクセサリーは、介護の邪魔になるだけでなく、利用者が怪我をする恐れもあるため業務中は外しましょう。
髪の毛が長い場合、あらかじめひとつにまとめるといった工夫をしておくと、業務に集中できます。
身体介護は利用者との距離が近い状態で行うため、体臭や口臭のケアに気を配ることも大切なマナーです。
まとめ

接遇とは「おもてなしの心を持って、サービスを提供すること」を意味します。
接遇力を高めるうえで、何か特別な準備や対応をする必要はありません。
人として当たり前の思いやりや、相手への敬意を意識すれば、今目の前にいる利用者にどう関わればよいか、自ずと分かるはずです。
今回ご紹介した接遇マナーのチェックリストを参考にしながら、提供するサービスの質を高めていきましょう。
監修者:中谷ミホ
ケアマネジャー、社会福祉士、介護福祉士、保育士
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