慢性的な人手不足が課題である介護業界において、介護助手は事業者、就労者の両方にメリットのある職種です。
一方で、介護助手は無資格でも働けるため、対応できる範囲を適切に把握したうえで業務にあたることが求められます。
本記事では、介護助手になる方法や仕事内容、給与などについてくわしく解説していきます。
介護助手とは
介護助手とは、介護福祉士などの資格を持つ介護職員が、利用者の直接介護をはじめとする専門性の高い業務に従事できるようサポートする職種です。
介護助手が周辺業務を一手に請け負うことで、介護の質の向上と現場の負担軽減につながる重要な役割を担っています。
地域や事業所によっては「介護補助」「介護サポーター」と呼ばれることもあります。
導入の背景
近年、多くの自治体で介護施設の事業所を対象に「介護助手を導入するための研修」を実施しています。
また、2024年度の介護報酬改定(※)では「生産性推進体制加算(Ⅰ)」の要件のひとつに「介護助手の活用等」が含まれました。
※介護報酬改定とは、介護保険サービスを提供する事業者へ支払われる報酬の改定のこと。通常3年ごとに見直される。
政府が介護助手の導入に力を入れている目的は、以下の3つです。
1.介護人材の確保
厚生労働省は、2019年度から2025年度にかけて、約32万人の介護職員が必要になると試算しています。
しかし、少子高齢化や人口減少に伴い、試算通りの人数を確保するのは厳しいのが現状です。
そこで就労のハードルが低い介護助手を積極的に採用し、多様な人材を確保しつつ育成につなげる狙いがあります。
2.介護業務の質の向上
介護業務における役割分担を明確化し、介護サービスの質の向上を図るのも目的のひとつです。
介護施設の補助的な業務を介護助手が担うことで、介護職員は身体介助や個別支援などの専門業務に専念できます。
これにより、よりきめ細やかなサービス提供が可能となり、利用者の満足度向上や機能維持も期待できるでしょう。
さらに、全国に先駆けて介護助手を導入した三重県によると「導入した25の老健施設全体で離職率の低下が見られる」とのデータが出ています。
介護施設における機能分化を促すことで、現場の負担が軽減され、介護職の離職防止にもつなげられます。
3.高齢者の就労と健康づくり
介護助手は業務の身体的負担が比較的軽いことから、健康な高齢者も就労可能な職種です。
日本の高齢化に伴い、若い世代だけでなく高齢者も福祉の支え手となることが求められています。
また、前述の三重県の調査結果によると「70〜74歳では4割の人が就労を希望している」とされています。
元気な高齢者が介護助手として働くことで、事業所は介護の人材を獲得でき、働く側も賃金や社会参加の機会を得られる点が魅力です。
また、高齢者以外にも、出産・育児などにより一旦介護職を離れた人や外国人労働者、障がい者の就労支援にも役立てられています。
介護助手になるには
介護助手になるために特別な資格は必要なく、求人に応募し、採用されればすぐに就労可能です。
施設や自治体によっては、介護の基礎について無料で学べる研修が用意されているところもあります。
自治体の研修では、修了後に介護施設とのマッチング支援や介護職員初任者研修の一部科目が免除されるケースもあるので、興味のある人は活用しましょう。
介護助手が働ける場所
介護助手が働ける場所は、入所施設・通所施設など多岐に渡ります。主な勤務先を表にまとめました。
入所施設 | 通所施設・訪問介護 |
特別養護老人ホーム(特養)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)介護老人保健施設(老健)有料老人ホームグループホーム | デイサービスショートステイ小規模多機能居宅介護訪問入浴介護 |
なお「介護助手募集」ではなく「未経験・無資格OK」という表記をしている求人もありますので、注意深く探してみましょう。
介護助手の仕事内容
2021年4月の介護報酬改定に伴い、2024年4月から無資格の介護職員は身体介護ができなくなりました。
そのため、特定の資格なしで従事できる介護助手は、原則として利用者の身体に触れる介護(食事・入浴・排せつの介助など)は行えません。
身体介護に付随する業務や周辺業務を行い、介護職員が専門的な業務に専念できるようサポートします。
ここからくわしく見ていきましょう。
利用者に関わる業務
利用者に関わる主な業務は以下の通りです。
- 食事・入浴・排せつなどの声かけや見守り
- 食事の配膳・お茶くみ・トロミ付け
- 入浴後のドライヤーかけ
- レクリエーションの準備・補助
- 送迎
なお、多くの自治体では介護の知識量などに応じて業務の難易度が分類されており、従事者の研修受講歴や知識量に応じて適切な業務が割り振られます。
その他の周辺業務
代表的な業務は以下の通りです。
- 施設内の清掃や居室のベッドメイキング
- 利用者の着替えの準備
- 室内の換気・加湿
- 備品の補充や交換
- 庭の水やりなどの環境整備
周辺業務を丁寧に行うことにより、利用者が快適に過ごせる環境を整え、介護職員の負担を軽減します。
介護助手の給料
介護助手の給料は地域により異なりますが、おおむね以下の通りです。
- 時給の場合・・・時給850円~1,300円程度
- 月給の場合・・・15~24万円程度
一方、資格保有者かつ常勤の場合の平均給与は以下の通りです。
- 介護職員初任者研修・・・約30万円
- 介護福祉士実務者研修・・・約30万2千円
- 介護福祉士・・・約33万円
上記を見ると、介護助手は資格を持たなくても働ける分、有資格者と比較して給料が低いことが分かります。
その反面、介護助手は1日3〜4時間からの勤務が可能な施設も多く、就労者の年齢や生活スタイルに応じた働き方ができるのが魅力です。
より収入を増やしたい場合は働きながら資格取得を目指すこともできるので、自身の希望に応じたキャリアプランを立てましょう。
(資格取得については、こちらの記事をご覧ください)
介護助手と看護助手の違い
介護助手と似ている名称の職種に、看護助手があります。両者の違いを表にまとめました。
介護助手 | 看護助手 | |
就労の要件 | 特別な要件なし | 特別な要件なし |
主な勤務先 | 介護施設 | 病院 |
仕事内容 | 介護施設における、身体介護に付随する業務や周辺業務を行う。 ・施設の清掃・環境整備・食事の配膳・お茶くみ・利用者の話し相手・入浴やトイレの声かけなど | 看護師などの指示の下、看護の専門的判断を必要としない看護補助業務を行う。 ・医療器具の洗浄・消毒・診察台や病棟のシーツ交換・状態が落ち着いている患者の入浴・排せつ介助やおむつ交換など |
上位資格 | ・介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修・介護福祉士など | ・准看護師・看護師など |
どちらの職種も入職にあたり特定の学歴や資格は必要とされません。
一方、看護助手は主に病院で看護補助業務を行うため、介護助手とは仕事内容が異なる部分も多いです。
キャリアアップを希望する際に取得するべき資格も変わって来るので、自分の希望する将来像に応じて職種を選びましょう。
まとめ
介護助手は資格や学歴を問わず就労でき、介護業界の人材確保や介護の質の向上、離職率の低下など幅広い役割が期待されています。
健康で労働意欲のある高齢者はもちろん、介護職に興味のある若者や、仕事と家庭を両立したい主婦など、さまざまな世代の人が活躍できる職種です。
また、働くなかでより専門性の高い仕事に取り組みたい、収入を上げたいと思った場合は、働きながら資格取得を目指すこともできます。
資格はないけど介護の仕事をしてみたい人は、ぜひ介護助手としての入職を検討してみましょう。
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