福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がい者が住みやすい住環境を提案するアドバイザーです。
住宅改修や福祉用具に関する提案や助言ができるとあって、超高齢社会の日本で需要が高まっている資格でもあります。
本記事では、福祉住環境コーディネーターの仕事内容や資格取得方法についてくわしく解説します。
福祉住環境コーディネーターとは?
福祉住環境コーディネーターとは、1999年に設立された民間資格です。
医療・福祉・介護の幅広い知識を持ち、各分野の専門家と連携を取りながら、高齢者や障がいのある方へ最適な住環境を提案します。
資格を認定している東京商工会議所によると、資格試験の累計受験者数は約170万人にのぼり、高齢化が進む日本におけるニーズの高さが伺えます。
福祉住環境コーディネーターの仕事内容
ここから、福祉住環境コーディネーターの仕事内容を見ていきましょう。
住環境に関するアドバイス
ケアマネジャーや建築家などの専門家と相談しながら、利用者の生活における課題や悩みを解消し、安全な住環境にするためのアドバイスを行います。
主な提案例を以下にまとめました。
- 玄関土間と廊下、廊下と居室などの段差をなくす
- 廊下・浴室・トイレなどに手すりをつける
- ドアを開き戸から引き戸に交換する
利用者の自宅をリフォームするだけでなく、バリアフリー住宅の新築や、介護施設の住環境の提案など、活躍の場は多岐に渡ります。
福祉用具の選定アドバイス
利用者の心身の状態や、障がいの程度に応じた福祉用具の提案も、福祉住環境コーディネーターの仕事のひとつです。
福祉用具の一部を、以下に紹介します。
- 車椅子
- 杖、歩行器
- 介護用ベッド
- 床ずれ防止用具
- 認知症高齢者徘徊感知機器
例えば車椅子ひとつとっても沢山の種類があるため、利用者の状態や予算に応じた福祉用具を紹介し、安全に使えるようサポートすることが大切です。
なお、同じく福祉用具の提案を行う職種に「福祉用具専門相談員」があります。
両資格を比較すると、福祉住環境コーディネーターは医療や建築の知識も有するため、より多角的な視点から提案できるのが強みです。
住宅改修費支給申請の理由書作成
要支援者・要介護者が、自宅で生活するための住宅改修を役所に申請することで、介護保険より費用の一部を支給してもらえます。
住宅改修前に役所に提出する書類のひとつである「住宅改修が必要な理由書」は、福祉住環境コーディネーター2級の有資格者が作成可能です。
理由書の書式は市区町村により異なりますが、利用者の在宅生活における課題や住宅改修の内容、改修により見込まれる効果などを記入します。
なお、住宅改修に必要な理由書は以下に該当する方も作成可能です。
- ケアマネジャー
- 地域包括支援センター担当職員
- 作業療法士
- その他これに準ずる資格等を有する者
理由書を適切に作成することにより役所の審査に通りやすくなり、利用者の負担軽減につながります。
福祉住環境コーディネーターになるには
東京商工会議所が主催する福祉住環境コーディネーター検定試験®を受験し、合格することで福祉住環境コーディネーターになれます。
ここから、試験の概要や合格率などを見ていきましょう。
福祉住環境コーディネーター検定試験®の概要
福祉住環境コーディネーター検定試験®の概要を表にまとめました。
2級・3級 | 1級 | |
受験資格 | 学歴・国籍などの制限なし※2級からの受験や2・3級の併願も可能 | 学歴・国籍などの制限なし※2級試験の合否に関わらず、どなたでも受験可能 |
試験期間 | 例年7~8月、11~12月の年2回 | 例年12月の年1回 |
受験方式 | IBT方式(注1)またはCBT方式(注2) | CBT方式(統一試験) |
受験料 | 2級:7,700円3級:5,500円 | 9,900円+CBT利用料2,200円 |
(出典:東京商工会議所検定サイト)
(注1)IBT方式・・・インターネットを通じて、自宅や会社等のパソコンから受験する方式。
(注2)CBT方式・・・全国各地にあるテストセンターのパソコンで受験する方式。
福祉住環境コーディネーターは1〜3級がありますが、いきなり2級や1級からの受験も可能なのが大きな特徴です。
級が上がるごとに専門的な知識や提案力を身につけられ、1級では社会福祉施設や福祉のまちづくりにも助言できる調整力を得られます。
なお、最新の試験概要は東京商工会議所検定サイトをご確認ください。
福祉住環境コーディネーター検定試験®の合格率と難易度
2022年と2023年の福祉住環境コーディネーター検定試験®の受験者数と合格率を表にまとめました。
実受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 | ||
2022年度 | 3級 | 5,616 | 2,183 | 38.9% |
2級 | 13,263 | 4,903 | 37.0% | |
1級 | 285 | 16 | 5.6% | |
2023年度 | 3級 | 5,372 | 2,197 | 40.9% |
2級 | 14,344 | 5,471 | 38.1% | |
1級 | 234 | 34 | 14.5% |
(出典:東京商工会議所検定サイト)
2級以上で住宅改修費支給申請の理由書を作成できることもあり、2級の受験者数が群を抜いて多いです。
合格率は2級・3級で37〜40%、1級は5〜14%台で推移しており、2級・3級の難易度はやや高め、1級はさらに難易度が上がります。
独学での受験も可能ですが、医療・福祉・建築の幅広い知識が求められるため、介護や福祉の学校に通って経験を積むことも受験対策として有効です。
まとめ
福祉住環境コーディネーターが有する福祉の住環境に関する知識と提案力は、あらゆるビジネスシーンで活用できます。
そのため、介護職員だけでなく看護師や建築士など幅広い職種の方が受験しており、近年急速に需要が高まっている資格です。
また、超高齢社会に突入した日本においては、仕事上はもちろん自身の私生活にもその知識を役立てられるメリットもあります。
在宅生活を送る利用者に、より有益な提案をしたい方はぜひ福祉住環境コーディネーターの資格取得を検討しましょう。
監修者:中谷ミホ
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士、保育士
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