
保育士を目指すなかで「地域限定保育士って何?」「通常の保育士とどうちがうの?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、地域限定保育士の概要やメリットとデメリット、通常の保育士との違いについてくわしく解説します。
受験資格や試験の難易度についても紹介しますので、受験を検討している方はぜひ最後までお読みください。
地域限定保育士とは?
地域限定保育士は、正式名称を「国家戦略特別区域限定保育士」といい、平成27年に制定された「国家戦略特別区域法」に基づき創設されました。
この制度の目的は、国家戦略特別区域に定められた地域で保育の需要に応えることです。
登録後3年間は受験した自治体のみで保育士として勤務できますが、3年経過後は通常の保育士として全国で働けるようになります。
(※一般制度化後は、1年間の勤務経験が条件として追加される方向で検討中です)
令和7年度は「大阪府・沖縄県」で実施が決まっているほか、神奈川県では県独自の規定で実施されます。
地域限定保育士が創設された背景
近年、待機児童や潜在保育士の増加などの理由から、全国的に保育士不足が課題となっています。
そこで、国は地域限定保育士制度を創設し、通常の保育士試験以外にも受験機会を設けることで保育士になれるチャンスを増やしました。
これまでに導入した自治体では、合格者の一定数が同自治体の保育施設に就職していることを確認しており、人材確保につながっているようです。
2025年10月より一般制度化される見込み
2025年10月より、地域限定保育士の一般制度化を予定していることが子ども家庭庁より発表されました。
「保育士確保の措置を講じても、保育士が不足する恐れが大きいことを証明する書類等」
を内閣総理大臣に申請すれば、どの都道府県や指定都市でもこの制度を活用可能です。
一般制度化を見据えて、岡山県が導入の意向を示しており、実施する自治体は増えると予想されています。
通常の保育士との違い
地域限定保育士が、通常の保育士と異なる点は以下の2点です。
- 保育実技講習会を受講すれば実技試験が免除になる
- 登録後3年間は受験した自治体でのみ保育士として勤務できる
一方で、筆記試験は通常の保育士試験と同じ内容で、業務範囲にも違いはありません。
地域限定保育士を目指すメリット
地域限定保育士を目指すメリットは、以下の3つです。
- 受験のチャンスが増える
- 実技試験が免除される
- 県外からも受験できる
国は、平成28年度から通常の保育士試験を年2回実施しており、自治体によっては年間で合計3回まで受験できる場合があります。
保育実技講習にて「音楽・造形・言語」に関する講習や、見学実習などの課程を修了すれば実技試験が免除されます。
実技講習は合計5日程度と時間はかかりますが、その分丁寧に学べるため、ピアノや造形などに不安がある方は特に恩恵があると言えるでしょう。
また、県外からの通勤が可能な方や近々対象の自治体に引っ越す予定がある方は、取得により就職先の選択肢を増やせるのもメリットです。
地域限定保育士を目指すデメリット
地域限定保育士を検討するうえで、以下のデメリットも把握しておきましょう。
- 実施している自治体が限られる
- 通常の保育士試験と内容にほとんど差がない
- 3年間は同じ自治体でしか勤務できない
これまで実施した実績がある自治体は以下の通りですが、すべての自治体が毎年実施しているわけではありません。
・神奈川県 ・大阪府 ・沖縄県 ・千葉県(成田市のみ) ・宮城県(仙台市のみ) |
通常の保育士試験で人材を確保できていると判断した場合や、試験開催のコストが負担になる場合は、実施を見送る自治体も存在します。
試験に関する最新情報は、自治体のホームページで確認できるので、こまめにチェックすることをおすすめします。
また、実技試験の有無以外は通常の保育士試験と受験資格や出題範囲が同じで、難易度が特別下がるわけではない点にも注意が必要です。
資格取得後、3年間は受験した自治体でしか保育士として働けないので、合格後の生活環境を十分考慮したうえで受験を決めましょう。
地域限定保育士になる方法
地域限定保育士の受験資格や試験内容などを、くわしく解説していきます。
受験資格
受験資格は通常の保育士試験と同様で、以下のいずれかを満たせば受験可能です。
- 短期大学、大学、専門学校のいずれかを卒業する
- 中学または高校卒業後、所定の児童福祉施設での勤務時間の条件を満たす
くわしく知りたい方は「全国保育士養成協議会」のホームページを参照してください。
試験日程・内容
令和7年度の実施自治体の試験日程と内容を表にまとめました。
自治体名 | 試験日程 | 試験内容 |
大阪府 | 筆記試験:10月18日~19日実技講習会:12月6日~12月23日のうち5日間 | 筆記試験:通常の保育士試験(後期)と同じ。 |
沖縄県 | 筆記試験:10月18日~19日実技講習会:11月29日~12月13日のうち5日間 | |
神奈川県 | 筆記試験:8月9日~10日実技講習会:10月~11月の期間に5日程度 | 筆記試験:県独自の問題を出題。出題範囲、試験時間、合格基準などは通常の保育士試験と同様。 |
大阪府と沖縄県の筆記試験は、通常の保育士試験(後期)と日程・問題が同じです。
上記3つの自治体で、一部科目合格の場合は3年間(条件を満たせば最長5年)その科目が免除され、通常の保育士試験にも引き継ぐことができます。
合格率
大阪府の過去の合格率は以下の通りです。
年度 | 受験申請者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和元年度 | 1,217人 | 484人 | 約39% |
令和2年度 | 1,281人 | 297人 | 約23% |
令和3年度 | 1,339人 | 350人 | 約26% |
令和4年度 | 1,139人 | 417人 | 約36% |
通常の保育士試験の合格率も20〜30%で推移していることから、ほぼ同程度の難易度であることがうかがえます。
地域限定保育士を受験する際の注意点
地域限定保育士の取得を目指すうえで、知っておきたい注意点は以下の2点です。
- すべての科目に合格すると保育士試験の科目免除がなくなる
- どちらも受験した場合は最終的に合格したほうが取得資格になる
地域限定保育士の資格を取得後に通常の保育士試験を受験することもできますが、筆記試験の科目免除は対象外となり一からの受験となります。
ただし、幼稚園教諭免許所持者の免除申請は可能です。
また、同一年度に両方を受験した場合は、最後に合格したほうが取得資格です。
一例として、以下のパターンがあげられます。
- 地域限定保育士試験で一部の筆記科目に合格→翌年の保育士試験で残りの筆記試験と実技試験に合格:保育士
- 保育士試験ですべての筆記試験に合格→地域限定保育士で実技講習を修了:地域限定保育士
両方受験する場合は、自分がどちらの資格を取得したいかをあらかじめ決めておき、順序を誤らないよう注意しましょう。
まとめ

地域限定保育士は、元々は特定の地域の保育人材を確保するために創設されました。
しかし、2025年10月からの一般制度化に伴い対象地域の拡大が見込まれています。
資格取得後3年間は保育士として働ける地域が限定されるものの、うまく活用すれば受験の回数を増やせるほか、実技試験を免除できることがメリットです。
自分が希望する働き方や勤務地の条件に合う方は、ぜひ受験を検討してみてはいかがでしょうか。
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